首相がリーダーシップを取ると
「首相案件」と呼ばれる

 もちろん、この認識は「朝日新聞」に限った話ではなく、地方自治体も含めた政治・行政の世界で生きる人々の共通概念である。それを端的に示す分かりやすいやり取りが、国会の議事録にもちゃんと収録されている。

 13年11月13日、国会の外務委員会で、自民党の松本剛明議員が、翌14年から発足するというNSC(国家安全保障会議)の定員をどこから持ってくるのかと政府に質問した。当時、内閣官房内閣審議官の北崎秀一氏がこのように回答をしている。

「国家安全保障局は、総理のリーダーシップの発揮を強力にサポートし、平素から、総理の意向を踏まえつつ、国家安全保障政策の企画立案、総合調整に従事する組織でございまして、厳しい財政状況や政府全体の定員管理の観点も踏まえる必要はございますが、しっかりとした組織づくりを行う必要があると考えておりまして、現在検討中でございます。今後、各省庁などとも連携し、国家安全保障局の機能が十分に発揮できる体制を構築してまいりたいと考えております」

 今回の「モリカケ騒動」では、犯罪の動かぬ証拠だとマスコミ各社が大騒ぎした「総理の意向」という言葉を当たり前に使っていることも特筆すべきだが、なによりも注目すべきは、この官僚答弁を受けた松本議員の「解釈」である。

「対外的にこれだけ総理案件だとおっしゃっているのであれば、ぜひ、全体の枠からそういった定員を持ってくる、こういう仕切りになっていくようにお進めをいただきたい、こういうふうに思います」

 面白いことに、議事録の中では、北崎氏は「総理案件」などとは一言も言っていない。外務委員会が始まってからも、政府側の答弁者は誰一人として、そのような言葉は発していない。ではなぜ、松本議員は「総理案件」という言葉を幾度となく話されたように感じているのか。

 松本議員が疲れからよく幻聴を耳にするなどでなければ、論理的に導き出される答えはひとつしかない。

 政治の世界で生きている人々というのは、「首相がリーダーシップをもって進めている」とか、「総理の意向を踏まえて」という文言を耳にすると自動的に、「首相案件」とか「総理案件」という言葉へと「脳内変換」されてしまうということだ。