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アマデウスたち

川久保賜紀
一つの音にもいろいろな色がある

週刊ダイヤモンド編集部
【第83回】 2009年6月18日
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川久保賜紀
写真 塚田比呂子

 目の美しい人だ。赤みを帯びた黒い瞳は、邪推も懐疑もなく相手のあるがままを受け入れるように、柔らかな静けさをたたえている。音楽に対する姿勢も同じなのだろう。

 ロサンゼルスに移住した両親の元に生まれ育った。5歳でヴァイオリンを始めると、みるみる頭角を現した。14歳のある朝、ラジオから流れたロシア出身のヴァイオリニスト、マキシム・ヴェンゲーロフの音に強烈に魅せられ、夜の演奏会に駆けつける。

 その師はザハール・ブロン。門下に多くの俊英を抱える名指導者として知られる。ドイツの自宅に自ら電話をかけ、レッスンの約束を取り付けた。

 奔放さと繊細さを併せ持った伸びやかな音色と、ほとばしる表現力。その類いまれなる才能がブロンに認められ、16歳で単身ドイツに渡り、本格的に師事する。

 「先生は、一つの音の中にもいろいろな色があることを教えてくれた」。ブロンの教えは水のように染み渡り、2001年のパブロ・サラサーテ国際ヴァイオリンコンクール日本人初の第1位、02年チャイコフスキー国際コンクール最高位という花を咲かせた。

 「多くの人が音楽を必要としている。それがロックでもポップスでもクラシックでも、声であっても風の音であっても。私はヴァイオリンで届けたい。聴く人の心を動かすこと、これは終わりのない目標」

 東京国際フォーラムの柿落としで、18歳で初めて日本を訪れた。今は地方公演も楽しみの1つとなった。


(『週刊ダイヤモンド』編集部 遠藤典子)


川久保賜紀(Tamaki Kawakubo)●ヴァイオリニスト 1979年生まれ。ジュリアード音楽院、リューベック音楽院、ケルン音楽大学などに学ぶ。来春はラヴェルやピアソラのトリオなど、新しい作品に取り組むほか、モスクワ放響ロシアナショナル管日本公演に出演。ベルリン在住。

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