商品や会社組織について知ることができ
弁護士として人脈や知識の幅が広がる

 大手電機メーカーに勤務するB氏。60期で33歳だ。今年1月から法務部で勤務している。電機メーカーに勤務する前は都内の弁護士事務所でイソ弁として、ボス弁の顧問先で企業法務を手がけることが多かった。企業法務だけではなく、離婚や債務整理などの民事事件、刑事事件、国選弁護も受任し、幅広く業務を取り扱っていた。A氏同様、妻の説得には手を焼いたそうだ。

「法律事務所に勤務していた頃、企業法務の案件もいくつか経験した。そのとき痛感したのは、依頼人の会社のビジネスモデルや取り扱う商品、商習慣、組織の仕組みや意思決定のプロセスなど、あらゆることを理解していないと、依頼人に満足してもらえる法律サービスができないのだということだ。父が会社員だったということもあって、会社員という働き方にはなじみがあったというのも、インハウスローヤーとして働く決断をさせた」

 今は毎日、自社製品について研究し、どのような特許を自社が保有しているかなどを把握することに努めているという。

「年収は変わらなかった。カネじゃないんですよ。いまは弁護士事務所で働いていたころよりも、会社の事業に深く関わることができて面白い。毎日発見がある」と笑う。

「確実に需要は増える」
弁護士キャリアの多様性へ

 今後、インハウスローヤーの需要はどう変化するのだろうか。ファーストリテイリング法務部で勤務し、日本組織内弁護士協会理事長でもある片岡詳子弁護士はこう断言する。

「企業向けの法律業務ニーズは確実に増える。コーポレートガバナンス、コンプライアンス、内部統制といったキーワードを聞かない日はない。今後ますます重要性を増す」

 加えて、グローバル化もそのニーズを増幅させそうだ。司法制度改革が本格化にスタートした2001年からの10年間で、企業は成長を求めて海外に出た。海外での会社設立、現地企業との業務提携、工場用地の取得、現地での人員採用、契約書の締結やチェック、ありとあらゆる場面で弁護士が必要になる事態が増えて来るだろう。同時に、海外の投資家も増えている。外国法共同事業法律特許事務所の一つであるスクワイヤ・サンダースの黒須賢・アジア地域統括パートナーは「取締役であれば、世界中の投資家からいつでも訴えられる可能性はある。もはや弁護士の仕事も一つの国のなかで収まらない」と、その活躍の場が広がると予想する。人数増加のペースは予想しづらいが、ニーズは生まれ、そこで活躍する弁護士が増えることは間違いなさそうだ。

 司法研修の終了後、法律事務所に就職してイソ弁からキャリアをスタートするという、今までの画一的なキャリアパスに多様性が生まれることになるだろう。そしてそれは、いま弁護士界が悩む「弁護士就職難」を、いくばくか解消するかもしれない。