ある日本のベンチャー企業が自社の米国特許を武器に米国IT企業を果敢に攻めている。グーグル、ヤフーなど13社を特許侵害で訴え、アップルまで標的に定める。しかも勝てそうであるから驚きだ。そこには自社の特許を活用するという日本企業が見習うべき経営戦略がある。

グーグルやヤフーを訴えた、日本のベンチャー企業イーパーセルの北野譲治社長
Photo by Toshiaki Usami

 2011年4月、米国テキサス州で、特許侵害に関するある大きな訴訟が起こされた。

 訴えられたのは、グーグルやヤフー、AOL、AT&T、そしてアカマイ・テクノロジーズなど、検索サービス大手からインターネット接続事業者、コンテンツ配信企業に至るまでの13社だ。

 こうした世界のIT産業をリードする企業を訴えたのは、実は日本企業。しかも、社員わずか8人のイーパーセルというベンチャー企業だ。

 無名のベンチャーが世界のトップ企業に訴訟を起こすとは、「なんと無謀な」と一笑に付す向きも多いかもしれない。

 しかし、6月から本格的な訴訟手続きに入ると、8月には早速“白旗”を揚げる企業が現れる。

 携帯端末「ブラックベリー」を製造するリサーチ・イン・モーション(RIM)だった。

 イーパーセルはRIMと特許ライセンス契約を結び和解し、事実上の“勝利”を収めたのである。

 その後も立て続けに3社と和解、ライセンス契約を結んでいる。他の企業とも現在争ってはいるが、いずれも勝てる公算が大きそうだ。

 日本のベンチャーが世界の大手企業に特許侵害で勝つ例はなきに等しい。なぜ、このベンチャーは勝つことができるのであろうか。