5年に一度、西暦末尾が0と5の年に実施される国勢調査。2010年に行われた最新調査の結果が、順次公表されつつある。

  国勢調査は、わが国に住むすべての人を対象にした最も重要な統計調査だ。国や自治体の施策は、国勢調査の結果を土台にして決められる。ビジネスの面でもマーケットを知る基礎情報が満載された、まさに「宝の山」といってよい。

2010(平成22)年度国勢調査結果の公開データ。人口以外にも多様なデータが詰め込まれている。 統計局ホームページで誰でも閲覧できる。
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 今日、国勢調査の結果は、日本最大規模のデジタルデータベースとしてネット上で公開され、誰でも無料でダウンロードできる。その情報量は、かつて印刷物で結果が公表されていた時代と比べ、はるかに豊富になっている。その一方で、一つの統計表に数多くの情報が詰め込まれているため、平素あまり利用しない人には容易に扱いきれないという難しさもある。デジタル時代の思わぬ落とし穴といえようか。

  一見すると、無機質な数字が並んでいるだけの統計データ。だが、数字の奥には、「人びとの住む街の今」が潜んでいる。この連載では東京23区を事例として取り上げ、そのデータから新しいマーケットを見出していくプロセスを紹介していこう。

東京23区は人口増加時代

  第1回目は、マーケットを把握するためのの基本中の基本となる「人口」を取り上げる。

  2005年と2010年の国勢調査結果を比べた日本の総人口の増加率(2005~10年の5年間の人口増加率)は0.2%。かろうじてプラスを保ったというところだが、47都道府県別に見ると、実に38の道府県で人口が減少した。そんななかで、東京都の人口増加率は2位の神奈川県(2.9%)を大きく引き離す4.6%。東京23区は、これをさらに上回る5.4%。人口減少時代も何のそのという勢いである。

  全国の市町村で人口増加率が最も高かったのは三重県朝日町だが、ここは人口が1万人に満たない小さな町で、大規模なニュータウンの開発が進んだことが、人口を一気に押し上げた。人口を一定の規模以上に揃えるため、市と区(ただし、政令指定都市の行政区は除く)に限って見ると、1位は東京都中央区(24.8%)。以下、4位豊島区(13.6%)、5位千代田区(12.8%)、8位港区(10.4%)と、ベスト10の中に東京23区から4区がランクインしている。ベスト15まで範囲を広げると江東区、足立区、文京区が加わり、半分近くを東京23区に属する区が占める。東京のパワーを雄弁に物語る結果だといえよう。