雑木林に咲くカタクリの花。日本の原風景の1つだ。今ではすっかり珍しくなったこのカタクリの自生群落を、練馬区内で見ることができる。

 緑被率26%、全区の4分の1以上が緑で覆われている練馬区には、民有地を開放した「市民緑地」が50ヵ所もある。23区随一の規模を誇る農地も、都市の貴重な緑だ。残っているのではない。積極的に緑を残し、増やそうとしている。そんな練馬区だから、商店街も自然の恵みと対にある。

計画なきまま農地が次々に宅地化
スプロールの後遺症に悩み続ける商店街

 人口が世田谷区に次いで多い練馬区だが、「もはや戦後ではない」と言われた1955年の人口は、21位に過ぎなかった。練馬区の人口が2位に浮上するのは、1996年のこと。実に、41年間で19区をゴボウ抜きにしたのだ。この間の人口増加率は3.4倍、人口増加数は45万人。すさまじい急増ぶりを記録した。

 問題は、人口の増え方にあった。計画なきまま農地が次々に宅地化されるという「スプロール」が進んだのである。

 都市の形成と商店街の発展の間には、一定の秩序が必要とされる。スタート時点で秩序を欠いた練馬区の商店街は、今もその後遺症に悩み続けている。狭く曲がりくねった商店街の軒すれすれにバスがすれ違い、買物客が慌てて身を避ける姿は、その最たる例と言えるだろう。

 この問題は、商店街の実績にも影を落としている。人口1人当たりの販売額は、全小売店平均が22位、専門店は23位。衣料品専門店に至っては、23区平均の8分の1しかなく、最下位と言うだけでは済まない深刻さだ。比較的健闘している食料品専門店でも、ようやく17位止まり。人口が伸びても、商店街の売り上げ実績に結びついていない。