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金融市場異論百出

量的緩和は「ニセ妙薬」に近い
市場の誤解を利用するFRB

加藤 出 [東短リサーチ取締役]
2012年4月26日
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 量的緩和策(QE)は、「愛の妙薬」に似ている。ドニゼッティのコミカルなオペラ「愛の妙薬」には、怪しげなニセ薬売りが登場する。彼は田舎の村を渡り歩き、あらゆる病気、あらゆる心の悩みに効く万能薬を売りつける。

 実際はただの安ワインなのだが、主人公の純朴な青年ネモリーノは、それが恋の悩みにも効くと騙されて購入してしまう。「妙薬」を飲んだ彼は、もりもりと勇気が湧き(単に安ワインに酔っている)、憧れていた女性に強気にアプローチする。そこにいくつかの幸運も加わって、めでたく2人は結ばれるというストーリーである。

 中央銀行が市中金融機関の超過準備を大規模に増加させると、さらに金融緩和が進んで、マネーサプライが増加し、その国の通貨は下落する、という見方がある。しかし、そういった貨幣乗数モデルは今は機能しない。中央銀行がいくら大量にマネタリーベースを増やしても、その資金は市中に流れず、単に中央銀行の当座預金に退蔵されるだけに終わってしまう。

 最大の理由は、銀行経営における資本の制約にある。貨幣乗数モデルは、準備預金を追加的に手に入れた銀行は、貸し出しや証券投資を自動的に増加させることを前提にしている。しかし、現代の厳しい自己資本比率規制、レバレッジ規制の下ではそうはならない。

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加藤 出 [東短リサーチ取締役]

東短リサーチ取締役チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを 2001年まで兼務。2002年2月より現職。 2002年に米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(Fedウォッチ・シンクタンク)にて客員研究員。マネーマーケットの現場の視点から各国の金融政策を分析している。2007~2008年度、東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「新東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)。


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