金価格は4月下旬に最高値「3500ドル」到達後は下落、一進一退相場の強弱材料は?Photo:PIXTA

金相場は上昇基調で始まり、4月下旬には1トロイオンス当たり3400ドルを超えて史上最高値を更新した。米トランプ大統領による関税政策の強硬化や中東での軍事的緊張、さらには米財政赤字や利下げ観測といった多様な要因が交錯し、安全資産としての金需要が高まった。だが、今後の金相場は、強弱入り混じる材料の下で一進一退の展開が続くとみられる。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

4月は米相互関税発表や米中による
関税引き上げの応酬で最高値更新

 金相場(現物、出所:LSEG)は、2025年に入って上昇傾向で推移し、4月下旬には1トロイオンス当たり3400ドルを超え、史上最高値を付けた。その後、上値は重くなったが、下値も限定されて、高値圏で推移している。

 金相場は、3月末から4月にかけて、連日、最高値を記録した。4月1日も最高値を更新した。その後、利益確定売りが先行したが、翌日に米相互関税の発表を控えて下値は限定的だった。

 2日にトランプ米大統領が発表した相互関税は、事前に想定されたよりも大幅なもので、貿易戦争激化懸念から金は買われた。3日は、世界的に株価が大幅下落する中、換金売り圧力が金にも及び金は下落した。4日は他資産の損失補填のための換金売りが広がった。中国政府は対米報復関税として、米国からの輸入品に34%の追加関税を課すと発表した。

 週明けの7日も換金売りが続き、金相場3000ドルを下回った。トランプ大統領は中国が米国への報復措置を撤回しない場合、中国からの輸入品に50%の追加関税を課すと表明した。

 8日は、換金売りが一服して金が買われる場面があった。一方、中国側は米関税引き上げへの対抗措置を取る姿勢を続け、米政権は改めて中国に対する累計104%の追加関税を9日から課す方針を示した。

 9日は、中国が米国への報復措置として累計84%の追加関税を課す方針を示して貿易戦争激化への警戒感が高まっていたが、トランプ大統領が、中国以外の国・地域について、同日発動したばかりの相互関税の90日停止を発表したことで、金は大幅続伸した。中国に対する追加関税は125%に引き上げて即時発効するとした。

 10日は、米中貿易摩擦の激化による世界景気悪化・金融市場混乱への警戒感や関税引き上げの米国経済への打撃を懸念したドル安を受けて、金は大幅続伸した。米政権はいったん125%と発表していた中国に対する追加関税を145%に訂正した。3月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化し、利下げ観測が強まったことも金相場を支援した。

 これ以降、金相場は4月下旬の最高値更新に向けて値を上げていく。次ページではその過程を振り返り、5月以降の相場の歩みを検証していく。