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世界を巻き込む途上国ビジネス

ブルー・オーシャンはどこにあるのか?
途上国のニーズを知らない日本人

中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]
【第2回】 2012年4月24日
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 日本や欧米といった先進国の市場が頭打ちの中、韓国や中国の企業が勢いを伸ばし、さらに円高という、つらい状況におかれている日本企業。この状況の打開策の一つとして、新興国、開発途上国におけるビジネスが日本でも盛んに議論され始めている。

 ただし、議論はされ、数多くのシンポジウムにおいても途上国ビジネスがテーマにあがっているものの、いまだに僕がよく聞かれる質問は「中村さん、途上国ではどういうニーズがあるんですか?」というもの。「途上国には行ったことがなく、想像もつきません」、「会社の意思決定が遅く、なかなか市場調査にも行けません」と続く。「調査会社にお願いして調査してもらったんですが、どこかで読んだ同じようなケーススタディしか出てきません」とも聞く。

 僕自身、途上国で長い間暮らしてきたが、家庭レベルの課題に目を向け始めたのはここ5年ほどのことだ。国連スタッフの時代は、大きな援助の枠組みや国の法制度、開発戦略など上流の課題ばかりを扱っており、貧困層の人々が日々の生活の中で直面している課題についてはほとんど目を向けることがなかった。しかし、特にコペルニクを始めて以来、首都ではなく農村部、遠隔地に足繁く通うようになったし、その中で貧困層の人々の日々の生活について多く学ぶようになった。

 というわけで今回は、「そもそも、途上国の貧困層の人々はどのような生活をしているのか」「どのようなニーズがあるのか」について考えてみたい。そこでまずは、彼らに共通する6つの課題を見ていこう。

課題1:現金がない

 途上国の世帯は、当然ながら経済的に非常に貧しい。コペルニクがプロジェクトを行なっている東ティモール・オイクシ県での調査結果によると、1月の1世帯平均支出は約70ドル。1世帯の平均人数が約5人なので、1人当たりにすると1ヵ月14ドル。つまり、1日あたり50セントも使っていないということになる。この少ないお金の中で生活に必要な食料、エネルギー代、教育費、医療費、洋服代などをやりくりしているのだ。

 世界銀行の最新調査によると、最貧困層と言われる、1日1.25ドル以下で生活する人々の数は世界で12.9億人、1日2ドル以下で暮らす人々は24.7億人にものぼる。

課題2:電気がない

 夜は真っ暗。わずかな明かりをともすのに、灯油ランプを使う。灯油の値段は非常に高く、貧困層の家計を圧迫しているだけでなく、灯油ランプを燃やす時に出る有害な煙を大量に吸うことになる。家の中はほぼ真っ暗であるため、子どもは夜間ほとんど勉強することができない。風が吹けば灯油ランプは消えてしまうし、もし倒してしまった場合は火事の危険もある。

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中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]

京都大学法学部卒業。英国ロンドン経済政治学院で比較政治学修士号取得。国連研究機関、マッキンゼー東京支社のマネジメントコンサルタントを経て、国連開発計画(UNDP)で、東ティモールやシエラレオネなどで途上国の開発支援業務に従事。アメリカ、スイスでの国連本部業務も経験し、ソマリア、ネパール、スリランカなど紛争国を主にカバーしていた。
2009年、国連在職中に米国でNPO法人コペルニクを設立。アジアやアフリカをはじめとする途上国の、援助の手すら届きにくい最貧層が暮らす地域(ラストマイル)へ、現地のニーズに即したシンプルなテクノロジーを使った製品・サービスを提供する活動を行い、貧困層の経済的自立を支援している。
2010年、2011年には、クリントン元米大統領が主催するクリントン・グローバル・イニシアティブで登壇。2011年にはテック・クランチが主催する「クランチーズ」で表彰。2012年、世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出された。また、テレビ東京系の「ガイアの夜明け」やNHKなどメディアへの露出も増加している。現在は大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘准教授も務め、マサチューセッツ工科大学(MIT)、コロンビア大学、シンガポール大学、オックスフォード大学、東大、京大など世界の大学で講演も行っている。2012年、ダイヤモンド・オンラインに連載「世界を巻き込む途上国ビジネス」を寄稿。著書に、『世界を巻き込む。』がある。
☆中村氏twitterアカウント: toshikopernik
☆コペルニク・ジャパンfacebookページ: http://www.facebook.com/kopernikjapan


世界を巻き込む途上国ビジネス

BOPビジネスという言葉も登場し、途上国に新たなマーケットを求めて進出する企業が増えている。しかしその多くは、現地のニーズをきちんと捉えたビジネスモデルになっていないことが多い。長年、国連で途上国の開発事業に携わり、現在は自身が立ち上げたNPOコペルニクにて、シンプルなテクノロジーを途上国に届ける活動を行っている中村氏が、現地ニーズに即した途上国ビジネスについて考える。

「世界を巻き込む途上国ビジネス」

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