アジア各国の社会起業家を取材し、辺境に眠る力強い可能性を描き出した『辺境から世界を変える』。本連載では、アジアの最果てを巡る取材の中で、ターニングポイントとなった出会いや出来事を、書籍未収録のエピソードを中心に書き綴ります。ラオス、カンボジア、タイ、中国、フィリピン、インド……。2年にわたる取材で、筆者、加藤氏は何を見たのか。
  まずは、アジアの社会起業家を巡る旅の始まりとなったある出会いの話から始めよう。場所はアジアの最貧国ラオス。この旅を始めるまで、僕は「貧困」というのは「解決せねばならない問題」だと思っていた。
  この旅は急成長するアジアの原動力となる人々の力を自分の目でみたい、そして、新たな社会の変革の担い手となろうとしている各国の社会起業家が活躍する現場に足を踏み入れたい、との思いから始まったものだった。

「この村の子どもたちの髪の毛って、みんな茶色いの?」

 ラオス奥地の村で出会った美しい女の子にたまたま僕の目が止まった。明るい茶色の髪を美しいと思ったからだ。そんな僕の何気ない問いに、その村へ案内してくれた友人はそっけなく答えた。

「それ、栄養失調だよ」

 栄養が不足すると、髪の毛は細くなり、光が当たると茶色く見える。僕は、そんな「当たり前」のことすら理解していなかった。

「茶色い髪」の少女<br />――ラオス奥地で突きつけられた「貧困」の現実ラオス奥地で出会った、アカ族の女の子。僕は、この場所で「貧困とは何か」ということを改めて考えさせられる