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出口治明の提言:日本の優先順位

社会保障改革を考える視点――わが国の制度の原点はどこにあったか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第46回】 2012年4月24日
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 わが国の財政は危殆に瀕している。この20年間で歳出は約200兆円増加したが、そのうち、約150兆円が社会保障関係の費用で占められている。この一事をとっても、社会保障改革が必要なことは誰の目にも明らかだが、改革自体は遅々として進んでいない印象を受ける。

 およそどのような制度・仕組みであれ、抜本的な改革を行う上では、そもそもの原点に立ち戻って考えてみることが、最も有効な方法である。今回は社会保障改革を考える視点について考察してみたい。

自助、共助、公助の関係は
これでいいか

 近代社会では、原則として、全ての市民が社会的・経済的・精神的に自立することが暗黙知として共有されていると考えるが、市民の安心感を醸成し、その社会、経済の安定性を確保する観点から、自助、共助、公助のバランスがほどよく取れている社会が望ましいことは明らかである。

 その場合、言うまでもなく、基軸となるのは自助である。自分のご飯は自分で働いて食べるということが大人になるということであり、市民社会のいわば掟でもある。そして、自分で働くためには、自らの健康管理が何より重要であることは言をまたないであろう。このような自助を、政府が側面支援する場合もある。例えば、貯蓄を奨励する目的で税制を多少優遇する等のケースがその典型であろう。

 自助を補完するものが、生活のリスクを相互に分散して担保する保険制度等であろう。これには、民間企業が担う私保険(生命保険や損害保険)と、公的セクターが担う社会保険(わが国の健康保険制度や年金制度等)がある。わが国では、私保険についても一部政府の側面支援(税制における保険料控除等)が行われているが、社会保険については政府の関与が相当に大きくなっている(社会保険料負担約65%程度に対して税負担が約35%程度)。

 そして、憲法によって定められた市民の生存権を担保する、いわば最後のラストリゾートが公助であろう。即ち、自助や共助では十分に対応しきれない貧困世帯や生活困窮者等に対して、一定の受給要件を定めた上で必要な生活保護を与える仕組みが公助であって、その財源は100%税金となる。なお、公助の分野を寄付やボランティアによって市民が一部担う場合もある。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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