
東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。それはほかのすべての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。
※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです
某月某日 迷子
非日常の世界観を守るため
私はこれまでの人生で迷子になったことがない。だから、迷子になったときの不安や恐怖を実感としては知らない。
しかし、幼くしてまったく知らない世界の中に、ポツンとひとりきりになってしまった絶望は想像するにあまりある。
幼少のころに東京ディズニーランドで迷子になり、キャストのお姉さんに優しく対応してもらったことが忘れられなくてキャストになったと教えてくれた同僚もいたほどである。彼はそのときのキャストのお姉さんが勇敢なヒロインのように輝いて見えたのだという。それが印象的で、自分もそんなキャストになってみたいと思ったのだそうだ。
迷子はゲストが発見してキャストに伝えてくれることも多い。アトラクションキャストやゲストコントロールキャストは持ち場を離れることが難しいため、多くの場合、カストーディアルキャストが対応することになる。
さて、われわれカストーディアルキャストが迷子を発見した場合*には対応の方法が定められてある。
(1)近くに保護者がいないかどうか捜す(2)迷子センター*へ、迷子の氏名・年齢・住所・特徴などを連絡する(3)上司に許可をもらい、迷子センターへ案内する。
以上のような流れになる。
また、保護者からの問い合わせに対しては、(1)近くを一緒に捜す(2)迷子センターを紹介・案内するとなっている。