液晶テレビ「AQUOS」の登場から10余年。驚異的な成長を遂げた“液晶王国”は、巨大な工場群を自社で支えられず、台湾・鴻海グループの資本受け入れを決めた。歯車はいつ狂ったのか。
今年で創業100年目に当たるシャープが、2011年度、過去最悪の3800億円の最終赤字に沈む。
図(1)は、2000年度以降にシャープが事業に注いできた資本(投下資本=株主資本+有利子負債)と売上高、そして資本に対してどのくらい効率的に利益を生んでいるかを表すROC(資本利益率=純損益÷総資本)の推移を表したものだ。
10年前の02年度、2兆円ほどだった売上高は、07年度に約1.5倍の3兆4177億円に膨れた。これは1999年に商品化した、国内初の液晶テレビ「AQUOS」と、他メーカー向けの液晶パネル販売が起爆剤となっている。
液晶技術の優位を生かそうと、先駆けて巨大な液晶テレビ工場を次々と建設。04年1月に1500億円をかけた亀山第1工場が稼働、06年8月には3500億円(追加投資を含む)を投じた亀山第2工場が動きだした。
液晶テレビの売上高は約850億円、出荷台数は約90万台(02年度)から、6135億円、603万台(06年度)に。液晶事業への「依存率」は、17%から43%まで上がった。
一方、04年度からROCは5%を超えており、液晶パネルへの投資が効率よく利益を生んでいることがわかる。まさに絶頂期だ。
ところが、08年秋のリーマンショックによって事態は急変する。韓国、台湾メーカーのキャッチアップや過剰な設備投資で、液晶パネルは年率30%の価格下落に見舞われ、コモディティ(汎用)化した。
シャープが訴えた「画質の美しさ」なども、消費者は海外メーカーとの大きな差異を認めなかった。