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金融市場異論百出

過剰期待を寄せる「QEバブル」
日銀が消極的に映る二つの理由

加藤 出 [東短リサーチ取締役]
2012年5月9日
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 3月の日本のマネタリーベース(現金+日銀当座預金)前年比はマイナス0.2%だった。4月も若干のマイナスか横ばいだろう。これを見て、「日銀の資金供給は消極的過ぎる」と解釈してしまうと大きな誤解になる。

 マネタリーベースが伸びていない一つの理由は、流動性不安の後退にある。マネタリーベースの供給量が「緩和的か、緩和的でないか」を判断する際は、それに対する需要の強弱を考慮しなければならない。昨年の3~4月は震災による流動性不安が市場に存在した。そのようなときは、金融機関は日銀から資金を借りて、流動性のバッファーとしてそれを日銀当座預金口座に退蔵したがる(それ自体は実体経済を何も刺激しない)。しかし、今は流動性不安が存在しないため、マネタリーベースへの需要は特別強くない。

 需要の程度を考慮すれば、最近の日銀のマネタリーベースの供給は昨年よりもむしろ一段と緩和的だ。実際、主要通貨の短期金融市場の様子を観察すると、最も緩和的になっているのは円である。企業がこれほどCP(短期社債)を低利で大量に発行できる環境は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、フランクフルトでは見られない。しかし、企業の資金需要が高まってこないのが日本の問題である。

 もう一つの理由は、極めて逆説的だが、2月に日銀が国債の買い入れを10兆円増やすと決定したことにある。その追加緩和策を受けて、大半の金融機関は日銀の資金供給オペへの応札を消極化させた(オペの「札割れ」も多発している)。なぜなら、多くの金融機関は既に使わない準備預金を大量に保有している。それがさらに増加したところで、日銀当座預金口座に死蔵される「ブタ積み」が増えるだけだからである。

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加藤 出 [東短リサーチ取締役]

東短リサーチ取締役チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを 2001年まで兼務。2002年2月より現職。 2002年に米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(Fedウォッチ・シンクタンク)にて客員研究員。マネーマーケットの現場の視点から各国の金融政策を分析している。2007~2008年度、東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「新東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)。


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