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森信茂樹の目覚めよ!納税者

消費増税議論(その11)
「クロヨン」の存在を理由に
給付付き税額控除に反対するのは敗北主義

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第27回】 2012年5月11日
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所得の捕捉率を表す
「クロヨン」問題とは

 近代国家においては、さまざまな社会保障制度が、正確な所得の把握を前提に構築されている。そこで、社会保障制度を構築するには、そのもととなる所得情報が正確でなければならない。生活保護受給者が実は働いていて相応の所得があった、というのでは制度は維持できない。

 ところが、給与所得者、自営業者、農業所得者の間には、クロヨン(9:6:4)という捕捉率の格差があり、所得が正確に把握されていないと言われている。

 給与所得者の所得は企業が給与から源泉徴収する必要があるので、ほぼ完璧に把握されているが、自営業者の場合、必要経費を自ら算出して自己申告するので、本来は経費に入らないような私的消費が紛れ込む場合があることなどが、その理由とされてきた。

 税法では、このような私的消費を、家事費・家事関連費と定義して、収入から控除できる経費と区別してきた。とりわけ家事関連費については、事業用経費と私的消費の区分が明確にされている場合(例えば自動車の使用日報を付けているような場合)に限って、経費に算入できることになっている。

 しかし、個人に対する税務調査の機会は限られているので、現実的には家族でレストランに行った支払いなどの家事費(個人的消費)が経費に混入し、その分所得が低くなっている場合もある。

 このようなクロヨンに対して、税務当局は課税の適正化に向けてさまざまな努力をしているが、その努力には限界がある。この問題は、基本的に税務執行の問題で、各国の税務当局にとって、共通の悩みというべき問題である。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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