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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第29回】 2012年5月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

フレッシュ・シーズンの読書特集
成功談の落とし穴

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ビジネスの成功と「早起き」は本当に関係があるのか

 ほとんどのビジネス書には、「私の場合、新入社員時代には……」といった著者の経験談が書かれている。失敗談や「こうしておけばよかった」といった後悔も率直に記されていることが多い。それが「説得力がある」「親しみやすい」と読者から高い評価を得る秘訣のようだ……。前回は、そんな話をしました。

 しかし、ここにはもう一つ、忘れてはならない真実があります。それは、そうやって若き日の失敗やそれを乗り越える工夫を書いている著者は、まぎれもない「成功者」だということです。

 そして、著者がその世界で成功したのは、いろいろな原因・要素が複雑に絡みあっての結果です。才能、環境、時代、運、それに努力や実力、もしかしたら「ずるさ」「冷酷さ」のようなものがあったからこそ成功した、という人もいるでしょう。

 もちろん、ビジネス書に書かれている「私は朝5時に起きて、必ずカツオ節を削って出汁を取ったみそ汁を飲んだ。カツオ節を削る時間に、さまざまなビジネスアイディアが生まれてくるのです」といった話にウソはないでしょう。それも確かに著者の成功の秘訣の一つかもしれません。ただ、その後の成功に一体どれくらい「早朝のカツオ節タイム」が関係しているのかは、著者にも誰にもわからないのです。

 ちょっと難しい言い方をすれば、これは「早起きとビジネスの成功に正の相関関係はあるかもしれないが、因果関係までは明らかではない。ましてやそこにカツオ節が関係しているかどうかは、霧の中」となります。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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