しぼりたて純米吟醸生原酒 〔季節限定品〕4,410円(1.8L/税込み *価格は送料の関係で店ごとに異なる)取り扱い酒販店は焼津市内を除くと全国で30数軒。春以降は1回火入れの加水バージョン(4,032円)となる。

 忘れもしない1984年3月。巣鴨プリズン跡地にそびえ立つ池袋サンシャイン60からほど近い雑居ビル群の片隅に、マニアックな地酒専門店として知られた「甲州屋」があった。

 いまや酒徒のあいだでは伝説化されているほどの酒屋だが、主はすでに児玉光久氏(故人)ではなく、弟さんが引き継いでいた。その店先で新酒の試飲会が行われるという情報を事前にキャッチして出かけたのである。

 主に勧められたぐい呑みに注がれた酒が「磯自慢」純米吟醸生原酒だった。日本酒通のあいだでは早くも注目されていた酒ではあったが、搾ってまだ間がない、ほのかに黄を帯びた透明の雫からはもぎたての果実を思わす芳香が漂った。

 酒暦10年に満たない若輩者の舌と脳では適切な形容詞を引き出すことのできないデリシャスな味わいは、次元をはるかに超えたものだった。

 「これが日本酒か。これが吟醸酒か。これが磯自慢なのか」。以来、僕にとって「磯自慢」は日本酒におけるスタンダードとなった。

「越乃寒梅」は水っぽい?

 学生時代から(経済的な事情もあり)どうしても安酒に流されがちな日常ではあったが、僕は未知の銘柄を積極的に開拓した。

 とりわけ、大学入学直前の75年に発足した日本名門酒会(全国約120の蔵元と約1800の酒販店で構成されたボランタリー組織)加盟店はよく利用させてもらったし、加盟店以外でも地酒に力を入れている酒販店は積極的に試飲させてくれた時代だったのも幸いした。

 当時は「越乃寒梅」(新潟市)が“幻の名酒”として一世を風靡していた。東京で扱っている飲食店・酒販店は少なく、それだけにどうしても飲みたい衝動に駆られて店探しに奔走。