ネットフリックスは数年前まで、米国のみでサービスを展開するローカル企業であった。それから10年も経たない間に190ヵ国以上へと進出を果たし、いまや世界を代表するグローバル企業に変貌を遂げた。ネットフリックスはいかにして、急速な世界展開に成功したのか。筆者はその重要な要因として、段階的な市場拡張、そして現地市場での他社との協働を挙げる。


 ネットフリックスのグローバルな成長は、同社の成功の大きな要因である。

 現在190ヵ国以上でサービスを展開しており、いまでは約1億3000万人の会員のうち7300万人近くが米国外の在住者だ。2018年の第2四半期には、米国外でのストリーミング収益が国内のそれを初めて凌駕した。2010年以前には米国のみ、2015年には50ヵ国のみで運営していた企業にとって、これは目覚ましい達成である。

 もちろん、米国の他のインターネット企業も国際的に拡大してきた(フェイスブックとグーグルは、その際立った例だ)。だが、ネットフリックスのグローバル化戦略と、同社が克服を要した課題の多くは、独特である。

 ネットフリックスは、コンテンツの契約を地域ごと、場合によっては国ごとに確保しなければならない。各国の規制当局によるさまざまな制約にも向き合う必要がある。たとえば、現地市場で視聴可能なコンテンツの制限などだ。

 米国外のネットフリックス会員の多くは、英語が堪能ではなく、現地語による番組配信を好むことが多い。また、非会員の多くは無料のコンテンツに慣れており、ストリーミング・サービスに対して少しでも対価を支払うことに抵抗を示したままである。

 さらに、すでに多くの国々で、ストリーミングをめぐる熾烈な競争が起きている。たとえばフランスとインドでは、現地のリーダー企業が現地語の動画コンテンツを提供しているため、ネットフリックスは先行者利益を得られない。また、ドイツやインドを含むいくつかの国々では、アマゾン・プライムなどの競合他社がすでに地歩を固めている。

 とはいえ、プライム会員の大多数は米国にいるため、プライムが進出済みだった市場にもネットフリックスは参入を果たしてきた。いまや世界中に広がるネットフリックスが擁する会員の数は、他のすべてのストリーミング専門サービス(HuluやYouTube TVなど)の会員数を合わせたよりも多い

 ネットフリックスの成功は、2つの戦略的行動によって説明できる。すなわち、3つの段階を経て新市場へと拡張していったプロセスと、それら現地市場での他社との協働だ。これらは、グローバルな拡張を目指す他の企業も採用できるものである。