去る1月、IBMは二度にわたり立て続けにビジネス界を驚かせた。

 最初は、1月20日に行われた2008年第4四半期の業績発表。この不況の影響でIT業界を含むほぼ全産業で企業収益が悪化する中、IBMは純利益(継続事業)がウォールストリートの予想を上回り、前年同期の40億ドルから12%増の44億ドルになったと発表、2009年の見通しも明るいと強気に出たのだ。

 だが、そのわずか数日後、2800人とも4000人とも言われる解雇が同社で行われているという報道が世界を駆け巡った。これほどの大企業ともなると、解雇の規模は明らかにされることが多いが、IBMの米国本社は「発表しなくても違法ではない」と主張した。

 好調な業績の中で、なぜ解雇を? だが、このふたつのニュースは決して無関係ではない。IBMはここ数年、コストカットによる厳しい経営効率化を図り、同時に不況に備えたビジネスモデルの確立を目指して着々と自己刷新を行ってきたからだ。その結果がこの好調な業績。あるアナリストは、「IBMは、まさにこういう不況の時に浮き上がるべく準備してきた」とすら語っている。

 では、その「準備」とは何だったのか?

ビジネスプロセス専門社員は
2年で3500人から5万人に急増

 それは、景気の影響を受けやすいハードウェア・メーカーから、長期間にわたるサブスクリプション契約によって途切れることなく収入が確保できる「ソフトウェアとサービス」を提供する企業への思い切った変身である。

 別名「ビッグブルー」と呼ばれるIBMは、今でもスーパー・コンピュータから始まったハードウェア・メーカーという印象が強い。だが、1990年代の大きな業績の落ち込みを経て、同社はサービス企業への変身を図ってきた。

 その動きが本格化するのは、2002年にプライスウォーターハウスクーパーズ(PwC)の経営コンサルティング部門であるPwCコンサルティングを買収し、同年ハードディスクドライブ (HDD) 事業部門を日立製作所に、2004年にパソコン部門を中国のコンピュータ・メーカー、レノボ・グループに売却してからである。その後、ハードウェア部門が抜けた穴を埋めるようにメキメキと成長していったのが、グローバル・サービス部門だ。
 
 グローバル・サービス部門は、さらに2つの部門からなる。コンサルティングやシステム・インテグレーション、CRM(顧客関係管理)などのソフト提供、財務、人事業務のアウトソーシングを請け負うIBMグローバル・ビジネス・サービスと、サーバーやストレージなどのインフラを提供するIBMグローバル・テクノロジー・サービスである。