魚を獲ってから消費者に届くまで、多くの人を介在する現在の市場間取引システム。これを打破できれば、生産者はより多くの利益を得られ、消費者も新鮮な魚をリーズナブルに手に入れることができるはずだ。正面からシステムの見直しといってもなかなか進まないが、突破口は意外にも、日本人の嗜好だった。“生食”信仰一辺倒から、もう少し加工品の美味しさを見直す――消費者と生産者の固定概念を改めることが、地域の問題の具体的で多様な解決策につながりそうだ。
日本の漁師が苦悩する現システムの限界
市場間取引――それは、日本の水産業の特徴を表すキーワードだ。
全国津々浦々の漁港に隣接する魚市場で仲買人によって競り落とされた魚は、大消費地の魚市場に運ばれ、小売り向けの競りに掛けられる。漁師が穫ってから消費者の口に入るまで、実に多くの人の手を介するこの物流システムは、その非効率性をかねてから批判されてきた。
打開策として、こうしたシステムを通さずに生産者(漁師)と消費者とを直接結べば、生産者はより大きな利益を上げ、消費者は新鮮な魚をリーズナブルに手に入れることができる、と言われている。
確かに、農林水産省水産庁によれば、水産物の小売価格に占める生産者(漁師)の受取価格は24.7%。同じ生鮮物でも青果物の41.9%を大きく下回る。しかし鮮魚の場合、輸送や販売にも厳密な温度管理が必要とされ、また小売りの現場では切り身にするなど加工の手間もある。水産物の出荷と小売りの経費が、青果物よりかさむのも無理はない。