ある米国通販サイトの日本上陸がファッション好きの間で話題を呼んでいる。その名は、「ギルト」。ドルチェアンドガッバーナ、バレンチノ、マークジェイコブスなど、30以上のラグジュアリ・ブランドが最大70%オフで購入できるショッピングサイトである。米国で設立されてほぼ1年が経つが、創業からたった1年で週販売上1億円以上、会員数50万を超えると言われている人気サイトに成長した。

ギルト
会員登録は、思いのほか、簡単! ログインすれば、各ブランドのタイムセール予告などの情報が得られる。

 ディスカウントの仕組みは、高級ブランドの過剰製品をブランド会社から直接買い付け、会員登録をしたユーザー及び会員から「招待状」を受け取ったユーザーに「時間限定」で提供するというもの。ブランド品の「ファミリーセール」と「タイムセール」をミックスしたものだと考えればいいだろう。顧客の購買欲を刺激する、きわめてなかなかに巧妙な仕組みである。

 さて、このギルト・グループ、創設者である二人の女性のうち一人は、e-Bayの設立メンバーであり、もう一人は、ブルガリとルイヴィトンで実績を積んだ人物。eコマースに関する知恵とファッションブランド業界における人脈・交渉力が同グループのビジネスモデルの基盤だといえるだろう。

 もちろん、同グループの成功の根本には、世界的なトップブランドの業界体質の変化がある。トップブランドが続々とロープライス帯の商品を発表するなど、業界全体に「デフレ傾向」が進行しているのは周知の通り。セールにならないとけっして値下げをしないことがトップブランドの「常識」であったが、最近では企業収益重視の観点から値下げ販売されることを見越してシーズン中に過剰在庫を放出する動きが加速しつつあるとも言われる。同サイトの成功は、その変化を実証したものとも思える。

 ちなみに、今年1月に行われたギルト・グループのアニバーサリー・パーティには、いわゆるセレブが集い、不況どこ吹く風の豪華さで衆目を集めたとか。こうした「神話」が生まれるのも、トップブランドとて、販売チャネルとしてディスカウンターを無視できなくなっている現状を反映していると言えるだろう。

 さて、3月12日にオープンした日本語サイトに、さっそく会員登録してみた。おっ、10万円超のドレスが、靴が、ほぼ半額! ブランド数はまだまだ限られているものの、確かにお得感がある。ブランドごとのタイムセールも予告されており、友達を紹介すると商品券もゲットできる。商品写真が美しく、一般のECサイトには無いラグジュアリー感がある。

 ギルト日本法人は2010年末までに会員100万人、5年内に年商500億円を目指すとのこと。「安売り」を前提として生産されたブランドでは満足できない層をいかに取り込むかが鍵だろう。ともあれ、好みのうるさい女性陣には下手にモノを贈るより、このサイトに「招待」した方が喜ばれるかもしれない。

(梅村 千恵)