中国で国民の消費者心理が統計開始以来、過去最低の水準に落ち込んでいる。それに加えてマクロ経済の最新データも軒並み悪化し、まさに経済は“八方ふさがり”だ。追い込まれた政府は新たな政策パッケージを導入し、景気回復を狙っているが、肝心な取り組みが欠落していることを指摘したい。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
中国が株価対策に「約16兆円」も拠出
経済対策の規模はすごいが「内容」は…
9月下旬から中国政府は、新たな経済対策を矢継ぎ早に発表している。不動産支援策と、総額8000億元(約16兆円)もの株価対策をはじめ、中国人民銀行(中央銀行)は立て続けに金融緩和を実施した。9月26日には中央政治局会議を開催し、財政支出を増やしてGDP(国内総生産)成長率5%程度の目標の実現に取り組む姿勢も示した。
中国では、不動産バブル崩壊による景気後退の危機感が高まっている。新たな政策の「規模」については、大方の予想を上回ったこともあり、株式市場の反応としては上昇傾向を示している。背景には、大手投資家が中国株を売り持ちにして、日本株を買い持ちにするオペレーションの巻き戻しがあったとみられる。
現状は期待先行で、香港、上海、深センに上場する中国株は急反発し、外国為替相場では人民元も上昇している。中国株を空売りしていた投資家の中には、買い戻さざるを得ない状況になっている。
ただ、今回の政策パッケージの「内容」は、人々の自由な発想を生かし新しい需要創出をサポートするものにはなっていない。スタートアップ企業向けの投資ファンド業界では、「中国の民間企業の活力が、目の前で衰退していく」などと、かなり悲観的な見方もある。
また、政府は不良債権処理にどう取り組むか、抜本的な措置も示していない。これは政策の調整が必要な措置であることは理解できるが、現状の政策内容で景気が下げ止まるかは疑問符が付く。追加の金融緩和や株価維持策が実施されたとしても、政治優先の政策方針が転換しない限り、債務問題の解決を目指すことは難しいはずだ。