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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

小選挙区制と争点のあいまいさがもたらした民主党の圧勝

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第33回】 2009年9月1日
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 政権交代という歴史的な選挙結果により、非自民の政治を求める国民の姿ははっきりと確認できたが、政策的に民主党、自民党がどう違うかに関しては、マニフェストを確認しても明確ではなかった。両党間で政策上の争点がはっきりしなかったにも関わらず、民主党がこれほどまでの圧勝となったのは、小選挙区制、および2大政党の枠組みにおける、世の中のムードの影響力の高さを証明するものである。

小選挙区制では
各候補者の公約に違いがなくなる

 今の日本の選挙は小選挙区制プラス比例代表制によって行われているが、各小選挙区で勝てる候補者は1人だけである。1人しか勝てない多数決投票においては、各候補者は多数派に賛成してもらえるような政策を打ち出すことが重要となる。多数派とは、多くの場合、中間層ということになる。したがって、すべての候補者が中間層の望みは何かを分析し、それに答えるような内容の公約を掲げることとなる。結果として、各候補者の公約内容は非常に似通ったものとなり、有権者にしてみると候補者の顔が見えない選挙となってしまう。

 これは、経済学の世界で言われるホテリングの立地均衡で考えるとより分かりやすい。夏のビーチで2つのアイスクリーム屋が営業する時、お互いがビーチの両端で営業すればうまく商圏を2分することが可能である。しかし、最大の売り上げを確保しようとすれば、立地条件的にはビーチのど真ん中に店を構えるのがベストである。そこで結局2つともビーチの真ん中に店を構えてしまうというものである。小選挙区でも同じことが起こっており、各候補者がビーチの真ん中に店を構えるがごとく、中間層の耳に心地よい公約を掲げることで、それぞれの違いは埋没化していく。

 もしこれが中選挙区制、あるいは大選挙区制のもと、各選挙区から複数の当選者が出る場合だとどうなるだろうか?

 最初から1位当選は狙わずに、2位当選、あるいは3位当選を目指して特色のある公約を掲げる候補者が出てくる可能性がある。実際、昨年、自民党のある大物議員の話を聞く機会があったが、なぜ各候補者はもっと特色のある政策を打ち出せないのかという質問に対し、小選挙区制だからだ、と明言していた。そして、その小選挙区制のもと自民党は議席を確保してきたという経緯があるので、小選挙区制を変えるわけにもいかない、とのことであった。

 政治や投票行動が経済的観点で解説されることはあまりないが、我々は投票を通じて公共財への支出方針を決定していることを考えれば、政治や投票行動は公共政策学、経済政策学の観点でとらえることも可能だということに気付く。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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