中堅中小企業の経営者が抱える悩みのひとつに事業承継がある。『平成31年度税制改正に関する経済産業省要望』によると、今後10年のうちに70歳を越える中堅中小企業の経営者は245万人になるが、うち半数に当たる127万人が後継者未定だ。そこで、中堅中小企業の承継に携わる税理士の平川茂氏に現状の課題を訊いた。(取材・文/大山弘子)

円滑な事業承継には不動産戦略が重要

 中堅・中小企業の不動産戦略に詳しい税理士の平川茂氏は、「企業経営者の方から不動産に関するご相談を持ち込まれるのは、事業承継や相続税納税のタイミングが多い」と話す。

「2018年4月に事業承継税制が大きく改正され、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する特例措置が設けられました。このことからも分かるように、日本の中堅中小企業では、親族内だけでは次世代への引き継ぎが難しくなっているのです」(平川氏)

平川茂
税理士、税理士法人 平川会計パートナーズ 代表社員。 平成4年、株式会社サテライト・コンサルティング・パートナーズを設立。中央大学大学院商学研究科兼任講師、同大学商学部会計学科兼任講師も務める

 事業承継の方法は、家族が事業を引き継ぐ親族内承継のほか、従業員や外部から経営者を探す親族外承継や、他社によるM&Aといった選択肢がある。平川氏によると、どの選択肢を選んでも「保有する不動産を引き継ぐか否か」という問題にぶつかるという。

「歴史ある会社ほど、多くの不動産を持っています。特に自社不動産の所有が求められる業種の場合、事業の拡大とともに所有する不動産が増えていきますが、法律の改正や事業形態の転換などで、一部の不動産が要らなくなっている可能性があります。事業承継のタイミングでこうした不動産の存在に気が付くというケースも少なくありません」(平川氏)

 つまり、所有している不動産に固定資産税や都市計画税がかかるだけで、利益を生まない“コストの塊”になっている可能性があるというのだ。これが企業収益を圧迫する原因になっていることもあり得る。