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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第31回】 2012年6月4日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

「ノマド」にとまどう
「いい話にはウラがある」
という感覚がなくなっている?

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「社内ノマド」と「社外ノマド」

 会社に縛られずに、働く場所を自由に選択する――そんな「ノマド」と呼ばれる働き方が、30代を中心に支持を集めています。

 本来、ノマドとは砂漠や草原で羊や牛を追って生活している遊牧民を指しますが、ノマドワーカーも日々、パソコンやスマートフォンを駆使して、カフェや簡易オフィスを渡り歩いて仕事をします。あくせくと営業をしなくとも、クライアントは共有オフィスやソーシャル・メディアを通じて舞い込んでくる。仕事仲間や資金もプロジェクトベースで集まり、一つのミッションが終われば散っていくというスタイルです。

 いわば、好きな時に、好きな場所で「自分」を看板に自由に働く。

 というと耳障りはいいのですが、ノマド実践者の講演や本に多くの人が飛びつき、社会現象のようにもてはやされていると聞くと、少々違和感を覚えずにはいられません。できる人はすごいけれど、そんなにいい話ばかりではないのではないか、と思うのです。

 たとえば、昨今、会社でも決まった部署を設けず、企画ごとにチームを作り、案件が終われば解散するというプロジェクト制を敷くところが増えています。

 一見、効率的に見えますが、実は落とし穴があります。

 私が産業医をしていた会社では、そうしたシステムから落ちこぼれる人が結構いました。直属の上司もいなくて人間関係が希薄なので、何か問題が起きた時に相談する相手がいないのです。調子がいい時はいいのですが、ちょっとでもつまずくと途端に途方に暮れてしまう。

 そうすると、マジメな人ほど周囲に迷惑や心配をかけてはいけないと考え、一人で抱え込んでしまいます。さらに、こうした弱い立場の人をお荷物のように誹謗中傷する意地悪な人がいないとも限りません。結果、精神的に参ってしまって私のもとに駆け込むケースをたびたび見てきました。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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