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岸博幸のクリエイティブ国富論

日本航空の株式再上場は本当に正しいのか

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第188回】 2012年6月8日
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 2012年度3月期決算で過去最高となる2000億円の営業利益を達成した日本航空(JAL)は、今月末にも株式再上場の申請を行い、9月には再上場を果たすと言われています。一見非常に明るい話ですが、この再上場は本当に正しいのでしょうか。政府の産業政策の間違いが市場の競争を歪める典型例となりかねないのではないでしょうか。

政府の過剰支援

 JALは2009年に政府に対して支援を要請し、その後は法的整理(会社更生法適用)と公的資金を併用して新たな経営陣の下で再生に取り組み、予想以上のV字回復を実現しました。

 細かい部分を捨象してざっくりとした形でJAL再生の過程を概観すると、まず従業員数を2/3に減らして企業年金の水準もカットするなど、今の東電とは比べものにならないほど厳しいリストラを断行しました。

 それに加え、古い航空機の売却、使用中の航空機の簿価の大幅減額などにより資産を大幅に圧縮し、1兆円近くの評価損を計上しました。そして、金融機関の債権放棄などにより、有利子負債も1兆5000億円から2000億円にまで圧縮しました。その結果、B/Sは抜本的に改善されたのです。

 それでは、なぜこれほど抜本的なB/Sの改善ができたのでしょうか。法的整理というプロセスを経たことに加え、やはり政府の支援の果たした役割が大きいことは明らかです。

 まず、政府は出資や融資などを通じてJALに1兆円近くの公的資金を投入しています。通常の法的整理のみではこれだけ大規模な資金調達が不可能であることを考えると、莫大な公的資金という政府の支援があったからこそ、1兆円近くの評価損を計上することができたと言えるのではないでしょうか。

 かつ、最近の法改正により欠損金の繰り越しができる期間が9年に延びたので、JALは2018年度まで法人税を払わなくて済むのです。JALの収益見通しに基づくと2012年度以降は年間400億円以上の法人税負担が軽減されるので、結果として、JALが債務超過から立ち直るまでの政府支援が、今後長期間にわたってJALの収益を底上げするのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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