どれほど優れた成果を上げていても、それは実力以上の評価を受けているにすぎず、自分の本性がいつ暴かれるのかという疑念や不安を拭えない。このような状態に陥ることは「インポスター症候群(詐欺師症候群)」と呼ばれている。特に女性や人種的マイノリティーに見られる症状だが、この状態を放置しているとパフォーマンスに大きな影響を与えかねない。部下がインポスター症候群になったら、どう対処すべきか。本記事では6つの方法が示される。


 誰もが多かれ少なかれ、自分が他者を欺いている詐欺師のようだと感じた経験があるだろう。自分には能力がなく、資格もないという思いにさいなまれる。入社を認められ、採用されたのは、何かの間違いだったのではないかと考えてしまう。いつ何時、自分の正体が暴かれ、退場を命じられるのかと、人知れず悶々としている。

 たいていの人にとって、こうした悩みは束の間のもので、昇進した直後や、新しい仕事を始めたばかりのとき、あるいは自分が明らかにマイノリティーに属する職場に転職した直後に最も強く現れるものだ。だが一部の人にとって、自分は詐欺師だという感覚はより深く慢性化し、パフォーマンスに支障をきたすようになる。

 これが、「インポスター症候群(詐欺師症候群)」である。この言葉はもともと、女性プロフェッショナルを対象とした臨床研究で、心理学者のポーリン・クランスとスザンヌ・アイムスがつくり出したものだ。

 インポスター症候群の人は、職場で自己疑念や不安感、そして自分の能力不足が明るみに出るのではないかというたえ間ない恐怖に常につきまとわれる。成功したり、成果を上げたりするたびに、不安感が引き起こされるのだ。とりわけ女性や人種的マイノリティーに属する人が、この感覚に苦しむ。男性優位の階層社会では、その不安感がいっそう助長されやすい。

 インポスター症候群に悩む人をメンタリングするには、どうしたらよいだろうか。メンターがどれほど、指導するメンティ(被育成者)の目覚ましい才能や業績、創造性を指摘して励ましても、メンティ自身がみずからのポテンシャルやパフォーマンスを正しく認識できていなければ、そうした称賛の効果は期待できない。

 そのような人のメンタリングにおいて、役に立つ戦略がいくつかあるので、以下に紹介したい。