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森信茂樹の目覚めよ!納税者

えっ、海外から電子書籍を買うと消費税ゼロ!?
国境超えたデジタル財取引にどう課税するか

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第29回】 2012年6月12日
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デジタル財と消費税

 5月26日付の日経新聞は一面で、「消費税ゼロ 海外から配信 電子書籍や広告、楽天など検討 国境越えた取引非課税、外国企業と同じに 」と題する記事を掲載している。

 内容は、「海外拠点から日本に電子書籍や広告を配信すると、国外取引になるので、消費税がかからずに国内向け配信ができる。そこで、楽天などインターネット関連の大手企業は、海外ネット大手と競争条件をそろえるため、海外拠点からの配信の検討に入った」というものである。

 実は、国境を越えて事業者から直接個人に、音楽コンテンツや電子書籍などの電子媒体(以下、デジタル財)の取引が行われるようになると、消費税の課税が困難になる、という問題は、ずいぶん前から世界の課税当局間で話題に上り、OECDなど国際的な場で検討が行われてきた問題である。

OECDのガイドライン

 インターネット経由で、個人が音楽や映画などデジタル財の配給サービスを外国から受ける場合、税関を通らないので、消費税を課税する方法はない。本人が申告するということが考えられるが、そのような人はほとんどいないだろう。だから、その実効性は極めて薄い。

 しかしこれを野放しにすると、伝統的な取引(を行っている事業者)との間に課税上の中立性を欠き、公平性を損なうばかりか、税収にも不測の影響を及ぼすことになる。また、最終的には、国家間の税収配分という究極の問題につながって行く。

 この問題は、一国だけでの検討・対応には限界があるので、国際的な場(具体的にはOECDの租税委員会の場)で、民間事業者も加わって議論が行われてきた。そして、事業者間取引(BtoB取引)については、リバース・チャージ(輸入事業者が自ら申告し仕入れ税額控除<第24回参照>で返してもらう方法)など有効な対応が提言され、EU等で実行に移されている。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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