しかし釜石の防災教育はそうではありません。自分の頭で考えろ、場合によっては親が来なくても逃げろ、マニュアルも間違うことがあると教えています。つまり、親や先生が間違うことはあるし、災害は常に想定を超えるものだから、自分で自分の命を救い、かつ周りの人を誘いながら逃げなさいと小学1年生の頃から教えるのです。

 では実際に3.11の時、子どもたちはどうしたでしょうか。小学1年生が自宅に1人でいると、地震が起きました。ものすごく大きな揺れです。普通なら携帯でお父さんやお母さんを一生懸命探しますが、つながりません。だから親が帰ってくるまで“普通のいい子”は待ちます。これこそが問題です。いい子を育てていると、逃げそびれてしまうんです。でも釜石では小学1年生の子でも自分で判断して1人で逃げ、避難所に辿りつきました。そうした積み重ねが“釜石の奇跡”を起こしたといえます。

 一方、大川小学校では何が起こったでしょうか。校長先生がたまたま不在だったこともあるかもしれませんが、先生方がマニュアルに従った避難方法をとったことで、結果的に多くの子どもたちが命を落としました。

 これが正解主義と修正主義の違いです。釜石では修正主義を採り、1人ひとりの行動を重視して思考力・判断力・表現力を鍛えていたことで多くの子どもが助かりました。しかし、大川小学校では残念なことに全体が正解主義・前例主義で動いたためにこのような結果を招いてしまいました。

 この2つの違いから日本は、本当はもっと学ばなければならないのに、“物語”だけが報道され、終わってしまっています。日本の教育はまだほとんどが正解主義のままです。そのことをもう1度かみしめていただくために、1つ問題を出したいと思います。

800人の避難所に700個のロールケーキ
あなたならどう分けるか

藤原 みなさん、自分が避難所の所長・責任者になったと考えてください。場所は石巻周辺で、3.11から3~4週間が経っています。朝はサンドイッチ、夜はおにぎりが1、2個支給され、自衛隊も駐屯しているので1日1回は炊き出しで温かいものが食べられる状態です。みなさんが管理している避難所には800人が避難しており、役割の割り付けもできてルーティンの仕事もそれぞれに与えられています。

 そんなある日、東京からボランティアの青年がやって来ました。彼は、広尾に店を構えるパティシエが夜なべしてつくってくれた700個のロールケーキを持って、「どうぞおじいちゃん・おばあちゃん、小さい子に食べさせてください」と避難所を訪ねました。しかし、800人の避難者がいる中でロールケーキは700個。100個足りません。さてこのとき、みなさんは、どうしますか?これが問題です。それぞれ答えを頭に浮かべていただき、3人組になって1分半で意見交換してください。