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 ではそこまでです。みなさんいろんな意見が出たかと思いますが、これは現実に起きた問題なので、それをまずお伝えしますね。

 その青年は地震発生直後、お母さんと妹さんがいる地元・仙台へ向かいました。2人とも命に別状はなかったため2人を東京の自宅に避難させ、自分は被災地の様子を見ていました。すると、ボランティアとNPOが行政とつながっていないことがわかり、何とかしなければと現地に残って動き出しました。そのとき、ある有名なパティシエと知り合い、ケーキを作るから届けてほしいと言われます。パティシエは、昼間はお店の営業があるため、夜なべをして700個のロールケーキを作りました。

 しかし、青年がこれを朝、車に詰めて被災地へ運んでいったところ、当初約半分の避難所ですべて受け取りを拒否されてしまいます。なぜなら、「800人の避難者に対して700個のロールケーキしかない、100個足りないから」です。

 みなさん、この対応をどう思いますか?私は本当に許せません。ちょっと考えれば、800人の避難者がいた場合、100人くらい甘いものが苦手な人がいることくらいわかるでしょう。なぜそういう想像ができないのでしょうか。きっと配り始めてしまっても問題は起こらなかったはずです。

 おそらくみなさんは、半分に切るというアイデアを出していますよね。そうすると、800人に配れば半分のケーキが600個余りますが、そこでいろんな知恵が出てくるはず。避難所はすごくストレスが溜まるところなので、すばらしい避難所長はエンターテイメントを重視するのですが、例えば600個を使って大じゃんけん大会などを仕掛ければいいんですよ。

 私はこれで何を言いたいか。それは「時代は変わった」ということです。マイケル・サンデル教授が『ハーバード白熱教室(NHK)』で「正義とは何か」を問いかけました。日本人はこれまで正義と聞くと、水戸黄門の印籠を出された時のように思考停止してきました。しかし、彼は状況によって正義は異なることを明らかにしました。同様に僕は、「公平とは何か」と問いたい。

 公平の意味は高度成長期と成熟社会で異なります。高度成長期は上から目線のみんな一緒の平等、つまり均等割りの平等が公平でした。今は下から目線の1人ひとりそれぞれの納得感に公平の意味が変わってきています。しかし、それを理解していない人が避難所責任者の約半数を占めていたのです。

 これが「正解主義、前例主義、事なかれ主義」の究極の姿です。みなさんが考えてくださった、様々なロールケーキを配る手法は「修正主義、先例主義、事あれ主義」かもしれません。これからはそうした考え方が勝っていってほしいですね。でも、西條さんも避難所でそういう目にさんざん合ってきたそうですね。