6月12日、政府は深刻化する若年層の就業状況をてこ入れしようと、「若者雇用戦略」を決定した。その目玉政策として据えられたのが、ハローワークを大学に常設させるというもの。大企業志向の強い新卒学生を中小企業へ“橋渡し”することで、就職内定率の底上げを狙っている。はたして、持続的な効果は得られるのか。

新卒学生がハローワークで就活する時代になった。ジョブサポーターは、学生一人ひとりの就活状況、悩みを書き留め、カルテのように情報を蓄積する(写真は東京電機大学理工学部キャンパス)

 埼玉県にある東京電機大学理工学部キャンパス。校舎入り口の最も目立つ場所に、ハローワークの専用出張室が設けられている。

 週に2度、「ジョブサポーター」と呼ばれる専門相談員がハローワークから赴き、就職活動をする学生の個別指導を行っている。ジョブサポーターには、民間企業の人事部出身者やキャリアカウンセリングの有資格者が多い。

 6月初旬、生命理工学を専攻する4年生の矢島信人さん(仮名)が、相談に訪れていた。10社ほどは面接のステップへ進んだが、まだ内定は得られていない。

「面接では、取り繕うことをせずにありのままの自分を見せればいい、とアドバイスをいただいて、気持ちが楽になった」という。「ハローワークに悪いイメージはない。求人情報を紹介してもらって、希望の営業職に就きたい」。

 角田剛紀・東京電機大学主事は「リーマンショック以前ならば、ホンダ系部品メーカーが一気に10人を採用してくれた。もはやそんな奇特な企業はない」と嘆く。大学にとって、学生の就職内定率の高低は入学者数の増減に直結する。大学運営の生命線なのだ。

 埼玉労働局では、2010年4月から全国に先駆けて、傘下のハローワークと大学との協業を実践してきた。最初は、「一所一大学制」と銘打ち、ハローワーク1所につき、綿密な連携が得られる管内の1大学を選んで集中支援を行った。出張相談だけでなく、学生情報(学生の学部、専攻、自己評価、希望職種などを一覧にした情報)を労働局ホームページに張りつけて、中小企業が欲しい人材をリクエストできるようにした。「学生一人ひとりに対して、継続的に個別支援をしている。地道な作業の積み重ねに尽きる」(小野寺徳子・埼玉労働局職業安定部長)という。