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スペイン、ギリシャ情勢次第では世界恐慌も?
幻想に囚われたユーロシステムの「本源的な欠陥」

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第230回】 2012年6月19日
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正念場を迎えたスペイン情勢
支援を余儀なくされるユーロ諸国

 6月初旬、スペイン政府は国内の金融機関への公的資金注入のため、EUに対して最大1000億ドルの支援を求める声明を発表した。こうした事態の発生はかなり前から予想されていたとはいえ、スペインの金融機関が厳しい状況に追い込まれていることを示すものだ。

 それに対してEUは、金融機関への資本注入に使途を限定した上で1000億ユーロの支援を行なうことを表明した。

 今回の措置の背景には、スペイン経済が大規模な不動産バブル崩壊後の大規模な不良債権処理に苦しんでいることに加えて、ユーロ圏の通貨や金融政策などに関わる特殊事情がある。

 本来、バブル崩壊後の景気低迷期には自国通貨が弱くなり、それに伴って当該国の輸出競争力が少しずつ回復するはずなのだが、ユーロ圏では統一通貨であるユーロが使われているため、どうしても強力な経済力を持つドイツなどの事情に影響されてしまう。

 また、スペインの中央銀行はユーロを増刷することができず、短期的には必要資金を外部からの借り入れに依存せざるを得ない。国の借金が増えると、信用力の低下を余儀なくされる悪循環に陥りやすい。

 一方、ユーロ圏諸国から見れば、スペインの信用力が低下すると、その悪影響はイタリアにも波及することが懸念される。それが現実のものになると、世界の金融市場や実体経済に大きな痛手が及ぶことが懸念される。ユーロ諸国としても、何とかそうした事態の発生を避ける必要があった。

 ただし、今回の措置で、ユーロ圏の信用不安問題は完全に片づいたわけではない。これからも様々な事態の発生が予想される。果たして、ユーロ圏がそれに耐えられるか否か。懸念される要素は多い。

 ユーロ圏では、ギリシャを発端として、アイルランド、ポルトガル、そして今回のスペインと、財政状況の悪化などによって支援を決断せざるを余儀なくされた。

 一方、支援を提供する側のドイツやオランダといった北欧諸国は、「そうした支援を永久に続けることはできない」と明確に意思表明している。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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