「財政赤字は縮小したのに…」日本経済が“完全復活”できない根本的な問題とは?30年債の利回りが過去最高を記録した背景にあるのは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

長期金利の上昇が示す
危険なシグナル

 2025年7月、日本国債の市場に一つの異変が生じた。

 30年物の長期国債の利回りが、過去最高となる3.17%前後まで上昇したのである。 https://www.bb.jbts.co.jp/ja/historical/main_rate.html

 30年という超長期の国債であり、しかも長年ゼロ金利政策が続いていた日本において、この水準は「異例」と言っていい。一般的に言われているように、日銀が段階的に利上げ姿勢に転じていることは大きな理由だろう。

 だが、これまでの金利と比べると、市場の反応は過敏であり、「日本の財政が危うくなってきたのではないか」との不安が急速に広がったことが見て取れる。

 このような市場の反応は、これまでの経過からすれば当然である。

 日本はGDP比260%もの公的債務を抱える「超債務国家」だ。国債の金利が上がれば、利払い費が増大し、保有国債の価格が下落する。財政の健全性に対する警戒心が高まり、金利はさらに上がる。

 だが、現実はむしろ逆である。実は、日本の財政赤字は2025年時点で大幅に縮小しており、近年においては「最も健全な状態」に近づいている。

 では、なぜ国債利回りが急上昇し、「財政危機」のような雰囲気が醸し出されるのか。その真因と背景を整理しておきたい。

財政赤字を拡大させた
「失われた30年」

 長らく続いたデフレから現在のインフレ基調に至るまでの経過を振り返ってみる。

 日本の財政赤字が1300兆円を超えるまで膨らんだ最大の理由は、1990年代以降の長期停滞、すなわち「失われた30年」にある。