ビジネスの現場にいると、小さなことから大きなことまで、さまざまな頼まれごとをされる。だが、相手を困らせたくない、仕事をこなせない人間だと見なされなくないという気持ちから何でも引き受けていると、慢性的にストレスを抱え続けるだけでなく、ミスが生じて評価を落とすことにもなりかねない。筆者は、特に意思表示をはっきりすべき3つの重要分野を提示し、頼まれごとを断る際に有効な具体策を示す。


 平穏で生産的な生活と、ストレスと鬱憤のたまる生活の違いは、1つの単純なスキルにあるかもしれない。ノーと言えるようになることである。

 ノーと言えるかどうかで、スケジュールが過密になるか、余裕ができるかが変わってくる。仕事を抱えすぎるか、適量の仕事をするかも左右される。とんでもない長時間労働をするか、ストレスを抱えずに納期に間に合わせるかの分かれ目にもなる。

 だが、ノーと言うのは難しい場合もあるだろう。相手を困らせたくない、仕事量をこなせないように見られたくない、あるいは現在や将来のチャンスを逃したくないといった理由で、断るのに抵抗を感じるかもしれない。

 しかし実のところ、まったくノーと言わなければ、恐れている結果につながる可能性を、むしろ高めることになるのだ。必要なときにきちんと断れば、ミスをする可能性は減るし精神衛生も保てる。

 では、具体的にどんなふうにノーと言えばよいだろうか。私はタイムマネジメントのコーチとして常々、クライアントに、限度を設定する方法、必要に応じて依頼を丁重に断る方法を教えている。

 以下では、3つの重要分野――時間的拘束、タスク、期限――に関して、ノーと言う最善の方策をいくつか紹介したい。