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出版界の破壊神か創造主か?グーグルが
目をつけたオンデマンド製本の正体

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第63回】 2009年10月7日
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 銀行のATM機で必要なお金を引き出せるように、自分が欲しい本をその場で印刷してもらう。信じがたい話だが、そんなことがすでに可能になっている。ニューヨークに本社を構えるオンデマンド・ブックス社の印刷・製本機械“エスプレッソ”によって、だ。

米オンデマンド・ブックス社が開発した“インスタント製本機”エスプレッソは実はすでにハーバード大学や世界銀行等で利用されている。Photo (c) AP Images

 見た目は、超大型のオフィス用コピー機のよう。これが1分間に150ページをプリントアウトする。プリントアウト後に綴じて表紙をつけ、断裁し、たった4、5分で1冊の本を“吐き出す”というスピーディーさだ。「本のためのATMマシーン」と呼ばれるのは、この簡単さゆえである。

 エスプレッソはすでに、ハーバード大学のブックストア、ワシントンの世界銀行内、エジプトのアレキサンドリア図書館など、世界中の25カ所ほどで稼働中だ。エスプレッソが製本するのは、主に著作権切れした約360万冊の書籍。オンデマンド・ブックスは先だってグーグルとの提携を発表し、グーグルがブック検索のためにデジタル・データ化してきた約200万冊をそのコレクションに加え本格的に出版界に乗り込んできたところだ。

 出版界では現在、書籍のデジタル化について喧々諤々の議論が繰り広げられている。アマゾンやソニーが発売している電子書籍リーダーによってデジタル書籍への注目が高まり、出版界の既存の販売、流通網には大きなプレッシャーがかかっている。

 グーグルはブック検索プロジェクトで著作権切れや絶版の書籍をどんどんスキャン、デジタル化しているが、これが現在出版中の書籍に及ぼす影響力は計り知れない。そこへ出現したエスプレッソは、出版界にとってはさらなる脅威なのである。

 オンデマンド・ブックスでは、「いくらデジタル化されても、やっぱり紙の本を手に取って読みたい人は多い」(同社CEOのデイン・ネラー)とにらんで、エスプレッソの開発に挑んだ。「紙の本を、電子ブックリーダーが追いつかないところまで進化させる」のが狙いだ。注文はクリックひとつ、すぐさまカラフルな表紙がついた1冊の本が手に入る。デジタル戦略で遅れをとっている出版社と性急な消費者との間に割って入って、ビジネスを成り立たせようという計画だ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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