消費税増税関連法案の採決は、野田佳彦首相と小沢一郎元代表の双方にとって、かろうじて面目を保つ奇妙な結果となった。

 野田首相が期待した展開は、法案が可決され、民主党内からの反対者が少数(30人以下?)にとどまり、わずかな小沢シンパが小沢氏と党を出ていかざるを得なくなることだったであろう。

 だが、期待ははずれて党内の反対者が57名に達し、棄権や欠席者も15人、総計72人の“造反者”が出てしまった。

 ただ、現時点では、与党が過半数を割る「54人の離党」の悪夢には至りそうもないのが救いであろう。

 一方の小沢氏は、離党して新党結成を目指す人が54人を越えることを切望していただろう。もしもそうなったら、離党を切り札としてしばらくは党内で野田政権を揺さぶることもできた。

 結局、両者の戦いは痛み分けに終わり、次の段階に持ち越された。

鳩山氏の増税反対発言で加速?
「造反者」が予想を上回ったワケ

 造反者の数が大方の予想以上であったのはさまざまな理由があろう。

(1)多くの国会議員が採決直前の週末に選挙区に帰り、消費税増税に対する世論の厳しさを肌で感じたこと。また、おびただしい数の抗議の電話、メール、ファックスが東京や地元の事務所に寄せられ、行動に大きな影響を与えたに違いない。

(2)輿石東幹事長をはじめ、官邸からも、「穏便な処分」が発信され、そのことも民主党国会議員の造反を容易にしたであろうと推察できる。

(3)鳩山由紀夫元首相が、「離党なしの反対」を明言したことも大きかった。

 消費税増税反対イコール小沢新党参加と受け止める人が多いことは、民主党内の反対者の広がりを抑えていた。反対しても党内にとどまるというもう1つの絶好の選択肢を鳩山氏が提供してくれたのだ。

 また、鳩山氏は、増税法案には反対するが、他の関連法案には賛成するという挙に出た。これにより、全法案に反対した小沢グループと差別化されることになった。

 これから、造反者への処分がどうなるか注目されるが、鳩山氏の行動が処分に1つの基準を与えたと言ってもよい。投票行動の違いが処分の違いの明確な基準となり得るからだ。