火曜日、消費税法案が衆議院を通過した。その直後に行われた首相会見、その内容を聞いて、筆者は途方に暮れている。

 それらはきっと、多くの人々にとってはどうでもいい些細なことかもしれない。

 しかし、長年、国会、とりわけ官邸を取材し、メディアの問題について考えてきた筆者からすれば、それらは簡単には看過できないものだ。

 きっとその指摘の一部は、読者のみなさんにとっても、現在の民主党政権への不信につながるものだし、野田政権への根源的な疑念が増幅する象徴的なものであるに違いないと考える。

 ということで、今回のコラムではあの「総理会見」について、筆者の疑念を記しておこうと思う。

野田総理がまず口にした
感謝の言葉は誰に?

 〈本日、社会保障と税の一体改革の関連法案が衆議院で可決をし、通過をすることができました。力強くお支えをいただいた連立与党の国民新党の皆様。そして、お互いにこの国のために譲り合うところは譲り合う形で、3党合意という大変重要な成案をまとめさせていただいた、御協力をいただいた自民党、公明党の皆さん。また、御賛同いただいた、たちあがれ日本の皆さん。こうした皆様のお陰でございました〉(首相官邸HP 平成24年6月26日 野田内閣総理大臣記者会見より)

 これは、衆院での消費税法案が可決した直後の野田首相の首相官邸で会見の冒頭の言葉だ。

 筆者はこの言葉を聞いた瞬間に、首相が視野狭窄に陥り、それをアドバイスする人物が官邸周りにいないことを直感した。