7月1日からレバ刺しが禁止となった。同時に、ソーシャル・ゲームのコンプガチャも規制の対象となった。レバ刺し禁止は民主党政権最大の愚策だと思う。消費者の楽しみを奪ったという意味で非常に罪深い。それはさておき、今回は、この「コンプガチャ問題」と「市場主義の限界」の関係性について考えてみたいと思う。

 「市場主義の限界」は、大ベストセラーとなった哲学書『これからの「正義」の話をしよう』の著者マイケル・サンデル氏の最新刊『それをお金で買いますか』のサブ・タイトルにもつけられている。筆者が今回、コンプガチャ問題と市場主義の限界について語ろうと思った理由は、コンプガチャが規制されるに至った背景と、サンデル氏がこの本で提起している問題は通底しているからだ。

 つまり、サンデル氏が危惧していたことが現実に起こった。それがコンプガチャ問題なのである。「お金を払えれば何でも買える仕組みは、結局はコミュニティを崩壊させる」ということを、ソーシャル・ゲームの世界が実証したのである。そのことを筆者の実体験を元に伝えたいと思う。

筆者もハマった釣りゲーム。
グリー躍進の原動力に

 実は、2年半前から去年の今ごろまで、筆者はグリーにハマッていた。ちょうど当時は、グリーやモバゲーなどのソーシャル・ゲーム市場が急速に拡大しており、筆者もマーケティング屋という仕事柄、流行りものには関心があり、グリーに入会した。

 また以前から、「インターネットの本質は喫茶店。コミュニティを生み出すことにある」と主張していたこともあって、ソーシャル・ゲームを新たなゲーム市場としてではなく、「ケータイというプラットフォームがどのようなコミュニティを生み出していくか」という点に興味を持った。ただ、それを確かめるためには、まずは自分で実際に参加してみるに限る。たまたま知人からグリーへの招待状を受け取ったこともあり、グリーに登録し、遊んでみることにした。

 グリーの中には数多くのゲームがある。その中でも僕がメインにやっていたのは「釣りスタ」というゲームだ。これは、携帯やスマホで遊ぶ釣りゲームで、ゲームとしてはシンプルなもの。ただし、仲間との協力プレイや交流も楽しめるソーシャル・ゲームでもあった。グリー躍進の原動力となったキラー・コンテンツだ。

 他の多くのゲーム同様、釣りスタも一種の成長ゲーム。最初は小物を釣るところから始まり、経験値を積めば上級者となり、ポイントをためれば優れた装備をゲットすることもでき、さらに大物を釣ることができるようになる。初心者の頃はコツコツと一人で釣りを続け、上級者を目指してステージを上げていく(10級から始まり最高位の10段を目指す)のだが、ある程度慣れてくるとチームに参加したりイベントに参加したりするようにもなる。