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スマートフォンの理想と現実

ネットでの行動と現実の行動がスマホを結節点に融合
「データ中心の世界」到来に向けた議論の深化を

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第29回】 2012年7月5日
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 7月3日、ソニーの音楽配信サービス「Music Unlimited」がスタートした。同サービスは、ソニーミュージックエンタテインメント社をはじめ、レコード会社各社から提供を受けた、国内外の1000万曲を超える楽曲を、パソコンやスマートフォンを介して月額1480円で好きなだけ聴けるというものである。

 またビクターエンタテインメント等のレコード会社各社も、これまでインターネット配信で実施してきた楽曲のコピー制限(DRM)を年内にも撤廃する方向だという。

 前回の連載で、著作権法改正(違法ダウンロード罰則化)の話題に触れた。文中で、これらの動きがCD等のパッケージメディアの規制だけでなく、むしろスマホを軸とした新しい音楽サービスへの布石である可能性を指摘した。はからずもこの予想が的中したかのように、音楽業界が動いている。

 別段驚くような話ではない。罰則化やパッケージメディアに対する対応があまりにも目立ったため見過ごされがちだったが、音楽業界そのものは、スマートフォン時代の音楽配信の在り方について、以前から検討を進めていたし、それに拍車をかけるような業績の悪化が発表されているのは、今年2月の本連載の記事でも取り上げた。状況証拠を並べて冷静に推理すれば、こうした展開は容易に読み解けたということだ。

 ただ、著作権法改正に係る手続きが、あれだけ批判の対象となったのに、舌の根も乾かぬ内にこうした展開を矢継ぎ早に進めてくるというのは、予想できなかった。正直あまりに節操がないという印象である。楽曲ラインナップやサービス提供状況等に遅れやばらつきが見られる等、事業面でもやや拙速な印象が否めないが、それ以上に「すべてにおいて、ちょっとひどすぎる」と、少なくとも私は思う。

 逆に言えば、恥や外聞を捨ててでも、スマートフォンの台頭を前提としたクラウド型の音楽配信サービスの移行に急がなければならない事情が、レコード会社各社にあったのだろう。うがった見方と言われるかもしれないが、これとて状況証拠を並べれば、そう読み解くのがむしろ自然だ。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/株式会社TNC 代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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