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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

10年後をにらめば消費増税は必然
長期トレンドを見ることの重要性

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第2回】 2012年7月9日
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中国の2030年ビジョン

 昨年9月、世界銀行の招待で北京に向かった。世界銀行と中国の国務院が共同で進める2030年中国のビジョンに関する議論に参加するためだ。

 中国はいまさまざまな難しい問題に直面している。たとえば人民元の自由化をどのようなスピードで進めるかという問題だ。為替介入を続けると国内で景気過熱が深刻化してしまう。だからといって、拙速に人民元自由化を進めると、輸出産業の競争力が落ちて、雇用に厳しい影響が出る。自由化を期待したホットマネーの動きも気になる。

 足下のいろいろな動きを気にすると、人民元への対応は非常に複雑なように見える。しかし、2030年という少し遠い先を見れば、問題はいたって簡単だ。人民元を自由化するしかない。金融市場を外に開き、人民元が国際通貨として通用するようにする。それで人民元が切り上がっていくようなら、それは中国の購買力が高くなっていくということでもある。

 中国が人民元の自由化をどのようなスピードで進めていくかはわからないが、長い目で見れば、これしか人民元の方向性はあり得ないのだ。2030年のビジョンにも、その点は明確に書いてある。

 中国社会の不安定化の原因となっている戸籍制度も同じだ。現在の制度では、農村部で生まれた人は都市の戸籍を持てない。農民工などのかたちで都市部に住んでいる農村出身者たちは、移民としていろいろな差別を受けている。それがあちこちで起きる暴動の原因ともなっている。

 今すぐにこの戸籍制度を改革しようとしても、いろいろと難しい問題が出てくることが予想される。しかし、2030年という遠い先を想定すれば、答えは一つしかない。都市と農村を差別する戸籍制度を撤廃する──これしかないのだ。これも2030年ビジョンに書いてある。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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