京都市のアニメ制作会社「京都アニメーション」第1スタジオの放火殺人事件を巡り、京都府内の報道機関で組織する「在洛新聞放送編集責任者会議」が府警に対し、公表されていない25人について身元を明らかにするよう申し入れた。事件では35人が犠牲となったが、府警が公表した身元は10人だけ。新聞やテレビが加盟する記者クラブ側は事件発生直後から身元の公表を求めているが、インターネット上では「悲しみに暮れる遺族や関係者を放っておいて」「実名公表は求めていない」などの批判が相次ぎ、府警も慎重な姿勢を貫いている。犯罪史上、まれに見る凄惨(せいさん)かつ残虐な事件。当局側の発表のあり方、メディア側の報道はどうあるべきなのか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
警察庁とメディアに板挟みの京都府警
この問題を巡り前提として申し上げておきたいのは、筆者は全国紙の記者時代に犠牲者、被害者の実名報道と遺族取材の意味を疑問に思いながらも、実際に経験してきたということだ。
そして何が正解なのか、解答を出せないまま「サラリーマン記者」を卒業してしまったことだ。
本文を読まず、タイトルと冒頭のリードだけを読んで「マスゴミが!」「いらねぇんだよ」などとヒステリックにならず、考察にお付き合いいただければ幸いである。
在洛新聞放送編集責任者会議(以下、会議)の申し入れ書は20日、京都府警の植田秀人本部長宛てに提出された。
会議は京都府内に本社・支局を持つ新聞・通信・放送の12社で構成するメディア業界の親睦団体で、地元の編集・報道局長や支局長らで組織する。うがった見方をすれば、“業界の談合組織”のようなものだろうか。