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世界を巻き込む途上国ビジネス

途上国向けのビジネスモデルが、日本でも生きる。
コペルニクが被災地支援から学んだこと

中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]
【第7回】 2012年7月10日
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 これまでお伝えしてきた通り、われわれコペルニクは開発途上国の最貧困層をターゲットに、シンプルなテクノロジーを届けている。実は、これらの途上国向けのテクノロジーが、先進国の日本でも役立ったことがある。それは、東日本大震災直後の東北でのこと。途上国を活動のベースにしているコペルニクがどうして日本の被災地支援に乗り出したのか。そしてそれがどのようなインパクトをもたらしたのかを含めて、その時の様子について書いてみたい。

国連時代の教訓が
被災地支援を躊躇させる

 2011年3月11日、ちょうど日本に出張中だった僕は、広尾界隈を歩いていた時に強い揺れを感じた。「かなり揺れが強いな」とは思ったが、その時はこれほどの惨事に至るとは想像もしていなかった。しかし、それから数時間後に始まったテレビ中継を見て、前代未聞の被害が出ていることを知る。すぐにコペルニクとして何かできないかを考えたが、僕は少し躊躇していた。国連時代の「自然災害支援の教訓」があったからだ。

 まず、自然災害の対応をする国連の人道援助機関では、被災地できちんと情報共有し、活動の重複をなくすためにも、「現地コーディネーション」の必要性を強く訴えている。なぜなら、途上国で大規模な自然災害が起きると、その直後から多くの機関・団体が一斉に被災地に向かうため、現地で大きな混乱が起きるからだ。また、現地の政府においても、何百という小さい団体に対し、個別に対応することができないという事情もある。

 実際に、災害直後における各支援団体間の調整は非常に重要で、シェルターや食料といった具合に、支援の種類ごとのクラスターができあがり、ここを通じて現地での情報共有が行なわれるようになっている。こういった調整を担うために、特別の機関「国連人道問題調整事務所(OCHA)」という組織までできているくらいだ。

 一般的に大災害直後は、道路や港などのサプライチェーンの重要拠点が破壊されることが多い。僕の過去の経験から見ても、そのような非常事態時においては、ヘリコプターやトラック、大きな船などを動かすことができる大規模な資金を持った団体しか支援を届けることができないということを肌で学んでいた。

 だからこそ、コペルニクという、立ち上げたばかりの非常に小さい団体が、被災地にどのような貢献ができるか、僕自身、当初は懐疑的だった。まずは地方行政が迅速に対応すると思っていたし、小さな支援機関が殺到することで行政の調整負担を増やしてもいけないので、ここは大きな機関に任せておくのがいいとも思っていた。

「灯り」のニーズに注目。
被災地支援に乗り出すことに

 しかし、僕の考えとは裏腹に、震災から数日後、居ても立ってもいられないという想いからか、多くのボランティアや小回りの利く小さな団体が自発的に現地に赴き、食料などの支援物資を届け始めたという事実を知る。コペルニクにおいても、ボードメンバーやスタッフ、ボランティアから、「コペルニクは被災地支援に貢献できるのではないか」という声が出始めた。

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中村俊裕 [米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO]

京都大学法学部卒業。英国ロンドン経済政治学院で比較政治学修士号取得。国連研究機関、マッキンゼー東京支社のマネジメントコンサルタントを経て、国連開発計画(UNDP)で、東ティモールやシエラレオネなどで途上国の開発支援業務に従事。アメリカ、スイスでの国連本部業務も経験し、ソマリア、ネパール、スリランカなど紛争国を主にカバーしていた。
2009年、国連在職中に米国でNPO法人コペルニクを設立。アジアやアフリカをはじめとする途上国の、援助の手すら届きにくい最貧層が暮らす地域(ラストマイル)へ、現地のニーズに即したシンプルなテクノロジーを使った製品・サービスを提供する活動を行い、貧困層の経済的自立を支援している。
2010年、2011年には、クリントン元米大統領が主催するクリントン・グローバル・イニシアティブで登壇。2011年にはテック・クランチが主催する「クランチーズ」で表彰。2012年、世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出された。また、テレビ東京系の「ガイアの夜明け」やNHKなどメディアへの露出も増加している。現在は大阪大学大学院国際公共政策研究科招聘准教授も務め、マサチューセッツ工科大学(MIT)、コロンビア大学、シンガポール大学、オックスフォード大学、東大、京大など世界の大学で講演も行っている。2012年、ダイヤモンド・オンラインに連載「世界を巻き込む途上国ビジネス」を寄稿。著書に、『世界を巻き込む。』がある。
☆中村氏twitterアカウント: toshikopernik
☆コペルニク・ジャパンfacebookページ: http://www.facebook.com/kopernikjapan


世界を巻き込む途上国ビジネス

BOPビジネスという言葉も登場し、途上国に新たなマーケットを求めて進出する企業が増えている。しかしその多くは、現地のニーズをきちんと捉えたビジネスモデルになっていないことが多い。長年、国連で途上国の開発事業に携わり、現在は自身が立ち上げたNPOコペルニクにて、シンプルなテクノロジーを途上国に届ける活動を行っている中村氏が、現地ニーズに即した途上国ビジネスについて考える。

「世界を巻き込む途上国ビジネス」

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