前回は、ハイブリッド・バリューチェーンのような、途上国におけるNPOと企業のコラボレーションや、大学、NPO、政府を絡めた様々な形での連携が、途上国の問題解決にイノベーションをもたらしていることについて書いた。

 今回は、NPOがこのような様々な立場の人たちとの連携を可能にするためには、多様なセクターに対応でき、バランスの良いグローバルなガバナンス体制を築いていくことが大事だということについて書いてみたい。

NPO経営陣は、
ビジネスの共通言語で語れるか?

 NPOが企業と連携をする場合、当然のことながら、パートナー企業のスタッフと話を進めながら具体的な連携のモデルを模索していくが、その過程で、財務状況を含めたNPOの経営状態や、理事会、経営陣の構成など、マネジメントに関する質問がよく出てくる。

 また、世の中にソーシャル・ビジネスのコンセプトが浸透していくなかで、長い間非営利の活動を支えてきた財団からも、ビジネスモデルについてのデータの提出を求めてくることが多くなっている。どこから収入を得て、どこにお金を使い、どういう効果を狙っているのかという、ビジネスでは基本的なポイントが非営利の団体にも求められるようになっているのだ。

 その結果、NPOの経営陣も“ビジネスの共通言語”で会話できることが必要になってくる。

日本においても、コペルニクは企業を対象に年に数回セミナーを実施。 企業とのコラボレーションを常に模索している。
Photo:©Kopernik

 また、NPOの最も重要なミッションである社会的問題の解決についても、定量的に計測し、その効果を伝えていくことがますます大切になっている。これまでは定性的な説明だけでよかったのが、いまでは数字で変化を表す必要が高くなっている。つまり、この資金を使うことでどのような社会変化が起こるのかを、現場の活動ストーリーだけでなく、プロジェクト全体から見てどうなのか、そして、費用対効果は高いのかをきちんと示さなければならない。

 さらには、何が他の団体と違うのかといった比較優位の観点も必要になっている。特に欧米の財団と話す時には、このような戦略的思考が非常に重要となる。

 一方で、途上国の問題を解決するには、様々な立場の人たちを巻き込んでいく必要があり、これを一国だけに限ることは意味がない。日本だけではなく、欧米、アジア、アフリカ、中南米といったグローバルな視点から、人材、資金、技術といった様々なリソースを有効活用できるかが問われている。