誤解を恐れず言えば、筆者はボランティアというものに対しては否定的である。あんなものは学生がやるものだ、くらいにさえ思っている。 もちろん、ボランティアの必要性を認めないわけではない。昨年の東日本大震災や和歌山県を襲った台風被害などのような、大きな災害の復旧作業にはボランティアの力は必要だし、平時におけるNPOの諸活動にもボランティアによるサポートは要る。

 しかし、それでもボランティアという活動に対する筆者の評価は限定的で、少なくともビジネス・パーソンはボランティア活動をやるべきものではないと思っている。昨今は多くの企業でボランティア制度を設け、社員に対してボランティア活動を奨励しているが、これもやめた方がよいと考えている。東北の被災地に社員ボランティアを送り込んでいる企業もまだまだ多いが、これについても、他にやるべきことがあるだろうと思っている。では、社員ボランティアをやめて、企業は何を社員にさせるべきか。それは「プロボノ」である。

ボランティアとプロボノの
最大の違いは?

 プロボノは、プロのスキルを活かしたボランティアであるが、それはいったいボランティアと何が違うのか、疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、単なるボランティアとプロボノは違う。言葉が違えば意味も変わるのだ。意味が変われば、そこに関わる人間の意識も変わる。プロボノをボランティアの一種と呼ばず、違う言葉で呼ぶのはなぜか。それは、関わる人間の意識を変えるためである。

 ボランティアとプロボノの最大の違いは、「生産性に対する意識」である。大企業のマーケティング部長がチャリティ・バザーの受付やテント張りをやるより、NPOのマーケティング戦略を作るほうが生産性が高い。そういったことをはっきりと意識づけるために、プロボノという言葉が必要だった。そして、言葉が生まれれば、プロボノをやる人間も、そのサービスを受けるNPOも意識が変わり、生産性というものに対して意識的になった。世の中には新しい言葉に対してなんでもかんでも「バズワード」だと規定して嫌う向きもあるが、新しい価値観を世の中に広めるためには、新しい言葉が必要になることもあるのだ。

 意味の変化はまた、新しい人たちの参加を促す。これまでボランティアには何の関心もなかったビジネス・パーソンが、プロボノと聞いて関心を持つ。「生産性」や「プロのスキル」というキーワードに反応し、そこに「おもしろさ」を感じる。結果、プロボノは特に大企業で働くビジネス・パーソンにとって、注目のキーワードになり、興味深い働き方となっている。単に「企業市民としてボランティアをしましょう」というスローガンだけでは、高いスキルを持ったビジネス・パーソンの関心は芽生えなかったはずである。

 プロボノについては、当連載の第11回でも紹介した。ここで論じたことの要点は、「ビジネス・パーソンはプロボノしたほうが自分のスキル・アップにつながりますよ」ということだ。なぜか。前回の記事よりもう少し詳しく説明しよう。