ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
井熊均の「性能神話」を打ち破れ

スマートハウスからスマートシティへ。
広い産業基盤が生む「組み合わせ」の連鎖を活かす

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第8回】 2012年9月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

今、国内では住宅メーカー、エネルギー会社、家電メーカー、自動車会社、不動産会社など様々な業種が参画し、スマートハウスを住宅街として展開する「組み合わせ」の連鎖が始まっている。どこの国にとっても、自動車、ICT、エネルギー、それらの集大成といえるスマートシティは最重要な市場である。こうした市場で日本は最大級の「組み合わせ」ビジネスを展開できる、世界でもトップグループの潜在力を持っている。今必要なことは、こうした状態をポジティブに捉え、成功に向け戦力を集中することだ。

スマートハウスと
ZEB(Zero Emission Building)

 前回までは、ハイブリッドシステムで世界をリードする日本の強みと革新企業としてのトヨタの存在をについて指摘した。自動車業界自体の規模が大きい上に、エネルギー、ICTという大規模な市場と接続していくのだから、市場としての可能性は壮大だ。アップルワールドをも優に凌ぐだけの規模がある。ここを足掛かりにできれば、日本の産業は再び活性化できる。そのためには、日本の産業界のもう一つの強みを活かすことだ。その強みとは、大きな可能性が見えると複数の産業界が呼応する、という重層的な産業構造である。

 自動車分野で、エネルギー、ICTという三つの大市場を組み合わせるコア技術を手にしたところで必要となるのは、その受け手となるシステムを作り上げることだ。こうした観点で注目されるのは、建築物のICT化、省エネルギーが加速していることである。中でも進んでいるのは、住宅用のスマートハウスだ。

 スマートハウスは太陽光発電、燃料電池のコジェネレーション、住宅の需給管理を行うエネルギーマネジメントシステムなどを搭載した環境性の高い住宅である。省エネルギー性能が高いだけでなく、自宅でエネルギーを消費した上で、外部にエネルギーを供給することもできる。蓄電池を搭載した商品も登場しているのでEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)との相性もいい。

 日本の市場が優れているのは、こうした商品が住宅メーカーの収益を支えるほどに普及しつつあることだ。価格的には従来型の住宅より高いが、エネルギー代が大幅に下がることを考えれば、消費者が受け入れられる範囲内にある。家電量販店がスマートハウスを扱うようになっていることも見ても、今後のヒット商品となる可能性がある。そうなれば、環境性を目指した商品が企業の収益源になる、という世界初のハイブリッド車プリウスの成功物語を住宅分野で再現できる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

⇒バックナンバー一覧