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井熊均の「性能神話」を打ち破れ

「組み合わせ」発想で日本産業を
再興するために、いま官民がなすべきこと

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第11回】 2012年11月7日
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最終回の今回は、これまでの議論を踏まえて、日本産業の再生に何が必要かをまとめてみよう。まず必要なことは、「組み合わせ」発想による企業の自己変革だ。その変革の中心となるのは次世代技術者である。技術を事業の立場から中立に評価し、顧客の価値を高めるための「組み合わせ」を考え、実現を目指すビジネスの司令塔たる次世代技術者を育成することが、今求められている。また、日本企業がグローバルマーケットで成功するためは、政府の役割も重要だ。相手国政府との良好な関係の維持、貿易環境の改善、相手国政府機関への働きかけ、政策資源の提供など政府の役割は不可欠である。その両輪がそろってこそ、日本産業は再生の途を進み始める。

技術者を再生せよ

 ここまで、ハイブリッドシステム、スマートハウス、スマートシティと連なる日本の「組み合わせ」発想について述べた。ここで、スマートシティは「組み合わせ」発想をイメージしてもらうための単なる事例であり、企業にとって「組み合わせ」発想のきっかけに過ぎない。重要なのは、「組み合わせ」発想により企業が変わることだ。その中心となるのは、モノ作り大国を支えてきた日本の技術者を、次世代に向けていかに再生するかだ。

 「組み合わせ」発想のビジネスが普及し、様々な技術がネットワークされるようになると技術体系は大きく変わる。これまで単品の設備で満たしていた機能をネットワークで満たせばいいようになるからだ。エネルギーシステムを例に取ると、効率性と途切れない供給を保ちながら、需要の変動に上手く追従する、という条件を一つの発電機で満すには、高い発電効率、高い稼働率、変動対応といった機能を備えなくてはならない。

 ところが、複数の発電機をネットワークし、需要側にも制御機能をつけると、こうした機能はネットワークにぶら下がる複数の設備で満たせばいいようになる。「組み合わせ」発想とネットワーク化は個々の設備、機器に求められる機能をシンプル化するのだ。

 個別の機器がシンプル化すると、従来型の設計、開発体制は根本的な見直しを迫られる。設計者の数も少なくてよくなる。ただし、企業が技術者を必要としなくなる訳ではない。むしろ、「組み合わせ」発想のビジネスを展開するために、付加価値のある「組み合わせ」を生み出し、それを現場でビジネスに仕立て上げるための次世代技術者が大量に必要になる。

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井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

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