本連載の第2回で取り上げた自律神経失調症の話は、大変好評でした。それだけ、自律神経失調症に悩む方々が、現代社会には多いということなのでしょう。そこで、もう少し掘り下げた話をしようと思います。
自律神経失調症がどうしておこるのか――。そして、内科医としてどのように対応しているのか――。それが、今回のテーマです。
不安のタネを心に留めて
気を揉むことが神経を過敏に
本題に入る前に、自律神経失調症とは何かを簡単に復習しましょう。
自律神経は交感神経、副交感神経で構成されています。普段はお互いがバランスを取っていて、このバランスが保たれて初めて、私たちは生命を維持することができます。しかし、交感神経と副交感神経の緊張が高まり、バランスが崩れてしまうと、さまざまな身体的な症状が出てきます。不眠や肩こり、頭痛、胃腸の痛み、だるさ、めまいなどの症状が代表的なものとして挙げられます。こうした症状が出やすくなる状態が自律神経失調症と言われます。
私は研修医の頃、ベテラン医師から、「病気の9割は患者さんの話をよく聴けば診断できるものだ」と諭されてきました。それ以来、どんなに忙しくとも、患者さんの話を聴く時間を確保しています。そうやって患者さんと接すると、自律神経失調症がどうしておこるのか、その答えに近づけます。私は、多くの場合、答えは「不安症」だと考えています。
動物界を例に考えてみましょう。シマウマがライオンに襲われている場面を想像してみてください。自然界では、シマウマは食物連鎖で上に位置するライオンに襲われ、食べられてしまいます。
シマウマはライオンに襲われると、命を落とすことを本能的に知っていて、全力疾走で逃げます。タテガミを立て、体毛は逆立ち、ただひたすら脇目もふらず逃げます。それはそうです、自分の命がかかっているのですから。
さて、この時のシマウマの交感神経はどうなっているでしょうか? 私は動物の専門家ではありませんので、あくまで推測の域を出ることはありませんが、きっと緊張は最高の状態になっているでしょう。