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生活保護のリアル みわよしこ

3日徹夜当たり前のデザイナーが「過労うつ」に
精神疾患を抱える生活保護受給者の自立へのジレンマ

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第4回】 2012年7月20日
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傷病や障害によって働くことができなくなる可能性は、年齢や職業に関係なく、誰にでもある。生活保護受給者の約35%を占める傷病者・障害者の年齢やバックグラウンドは、実にさまざまだ。今回は、精神疾患によって生活保護を受給している35歳の女性の、生活保護受給までの経緯・現在の生活・自立への歩みを紹介する。

希望は、納税者になること

雑談している時でも、高野さとみさん(仮名)の手は膝の上できちんと揃えられている。その左手首には、数十本のリストカット痕がある。
Photo by Yoshiko Miwa

 「将来の夢は、人より多く税金を納めることです。今、生活保護のお世話になっている分を、そうやって返したいです。そのためには働ける身体になりたいから、今はしっかり治療をしたい。でも、時間がかかっています。『開き直って、治療に専念していいんだ』 と自分に言い聞かせているんですけど、開き直るのはなかなか難しいです」

 こう語るのは、高野さとみさん(仮名・35歳)だ。細面で、くっきりした目鼻立ちが印象的な高野さんは、大きめの身振り手振りを交え、はきはきした口調で話す。何の予備知識も持たずに出会う人は、「仕事のできそうな聡明で積極的な女性」という印象を受けるだろう。しかし現在の高野さんは、うつ病・パニック障害などの精神疾患を抱えており、生活保護を受給しながら療養生活を送っている。発病のきっかけは、最初の勤務先での過労だった。

 今、高野さんが自分自身に課している課題は、

 「昼夜逆転を治すこと」

 である。夜、全く眠れなくても、朝は6時には起きて朝食の支度をはじめる。炊飯器と電子レンジしかない台所で工夫をし、野菜・キノコを中心とし、肉か魚どちらか少しだけを添えた食事を作る。買い物に出かけられるコンディションの時に、「もやし2袋50円」「鶏胸肉100グラム38円」といったものを買い、調理して冷凍しておく。

 朝7時に朝食を食べた後、どうしても眠くなることはあるけれど、なるべく外に出て起き続ける。夜は、日付が変わったら横になる。

 2年ほど前の高野さんは、ほとんど寝たきりのような生活をしていたそうだ。食事らしい食事は摂れず、乾パンとスキムミルクだけで生き延びていたという。現在までの堅実な進歩の延長線上には、年単位の時間はかかっても、きっと生活保護からの自立と納税があるだろう。インタビューしながら、私は確信した。今は、根拠らしい根拠はないけれども。

自立を強く意識していた少女時代

 高野さんは、1977年に四国地方で生まれ、短大卒業までを地元で過ごした。幼少期の記憶に残っているのは「とにかく家にお金がない」ことだという。着るもの・食べるものに不自由するほどではないが、住まいは長屋。

 「みんなが持っているものを自分だけ持っていないことは、よくありました。リカちゃん人形とか、ファミコンとか。最初から、おねだりを遠慮しちゃうんですよ」

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル みわよしこ

急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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