中年期から顕在化する
ゼニ・カネ・老後の問題

 それから20年余が経った。「ゲイ一期生」も、40代後半のおじさんゲイになっている(私もそうだ)。

「一生をゲイとして生きる」と宣言したものの、さて……。ゲイ一期生の先輩世代(50代以上)が若かったころは、まだまだ日本社会では差別が厳しく、一定年齢になると結婚していく道を選んだ。自らのセクシュアリティを押し込めて、ゲイを“卒業”していた。現在の私たちは、「社会の非婚化」ともあいまって、卒業などせずに済んでいるが、同時にゲイとしての中高年期や老後の「ロールモデル」も、いまだ見当たらないままなのだ。

 しかし、加齢の現実は待ったなし。シングルで暮らすゲイ、恋人・パートナーと暮らすゲイ、それぞれに情況があるが、若いときには見えなかった問題が顕在化し、向き合うことを迫られている。

搬送されたパートナーと
生き別れになる可能性も

 その一つに住宅がある。中年夫婦が住宅を賃貸するのに何の問題もないが、若者のルームシェアならともかく、中年の同性二人が一緒に住むと言って借りられる住宅は少ない。いきおい一方の名義で借りて、もう一方が「居候」という状態を余儀なくされるが、名義人が急死した場合など、もう一方は即、退去を余儀なくされる。

 共同名義で借りるにこしたことはないが、家主の理解は得られないことが多い。居候している場合、それがわかればトラブルも生じかねない。貯蓄ができて住宅を購入するとしても、同性カップルでは夫婦ローンや連帯ローンはほぼ不可能だ。どの銀行も1親等、つまり親子や夫婦に限っている。結局、一人の収入で買える水準の家に二人で住むことにならざるをえないのだ。

 もう1つの問題は病気だ。40代以後ともなれば、三大疾病(がん、脳血管疾患、心筋梗塞)をはじめ発病リスクが高まる。一人で暮らしていると、突然の発病時や入院時に誰の手を借りればいいのだろうか。仮に病気の後遺症で要介護状態になった場合、身の回りのこと、病院や施設での手続き、費用の支払いなど、どうすればいいのか、不安は尽きない(これはセクシュアリティにかかわらない問題だろうが)。

 では、パートナーがいれば安心かといえば、「家族」「配偶者」と認知されないため(また当人もそう言えないことが多く)、救急や医療機関でどのような対応をされるか不明だ。昨今は「個人情報保護」を理由に、患者であるパートナーの情報から排除されることが少なくない。

 たとえば、こんな悲劇があった。パートナーが外で心臓まひを起こし救急搬送され、携帯の最後の履歴ということで電話をしてきた救急隊に「家族の方ですか」と聞かれ、「そうではないが……」と答えてしまった。そのため、その後の病状は一切分からなくなってしまったという。

 幸い、彼は相手の家族と交流があったため、家族から情報が回り病院へ駆けつけることができたが、そうでなければ「生き別れ」になる可能性さえあったのだ。