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連載経済小説 東京崩壊
【第62回】 2012年8月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

戦闘開始3分前

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第3章

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 国交省に着いたところで携帯電話が鳴り始めた。

 理沙かと思ったが違っていた。

 森嶋はトイレに入って携帯電話のボタンを押した。

〈なんで俺に教えなかった。色々、適切なアドバイスが出来たはずだ〉

 ロバートの声が鼓膜を直撃してくる。

 「何のことだ」

〈とぼけるな。こういう重要事項は総理が発表するものだ。あの下手な写真は明らかに隠し撮りだ。新聞社のスクープなら日本政府の機密事項に対する管理能力が問われる〉

 彼は日本語が全くダメだ。覚えようとする気もまったくない。すでに記事は英訳され、アメリカは知っているのだ。

 「俺だって驚いてる。本当に突然の記事だったんだ」

〈あの写真があるってことは、すでに新首都の場所が決まり、基本構想が出来てるってことか〉

 「そうとは書いてないだろ。場所なんて一言も出てないし、あの写真の都市も一つのモデルにすぎない」

〈インターナショナル・リンクのビクター・ダラスと会ったことと関係あるのか。彼は政府の首都移転計画を知って、日本の降格を見送った〉

 「想像に任せる。俺の口からは言えない」

〈今から会いたい〉

 「俺には仕事がある。今ごろ省内では大騒ぎだ。今日の仕事が重要だと言うことはお前にだって分かるだろ」

〈今夜はどうだ〉

 「分からない。俺のほうから連絡する」

 森嶋は返事を待たず携帯電話を切った。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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